労働なくしては、人生はことごとく腐ってしまう。
だが、魂なき労働は、人生を窒息死させてしまう。
-アルベール・カミュ(フランスの小説家・ノーベル文学賞受賞者)
「体を壊すヤバい職場の特徴が分かったぞ!」という論文があったのでまとめていきたいと思います。
元ネタは2011年に南カルフォルニア大学が行った精度の高い79件の先行研究をまとめたメタ分析です。(R)
ちなみにメタ分析というのは、ざっくり言えば複数の研究を精査して一つの大きな結論を出す手法のことで、エビデンス界の横綱のような存在です。
一体どんな特徴がわかったのでしょうか?
それでは早速見て参りましょう。
ヤバい職場の7大特徴
結論、ヤバい職場の特徴ランキングは以下の通りです。
- 7位:労働時間の多さ
- 6位:仕事のコントロール感がない
- 5位:自分の役割が曖昧
- 4位:作業負荷が高い
- 3位:対人関係の対立
- 2位:役割の衝突
- 1位:仕事上の制約が多い
いかにもやばそうなものが並んでいるなーという感じですね。
この研究では、上記の特徴が以下にある「身体的症状」へ与える影響を調べてくれています。
- 腰痛
- 頭痛
- 眼の疲労
- 睡眠障害
- めまい
- 身体的な疲労
- 食欲
- 胃腸障害
ちなみに上記が選ばれた理由は、これらがストレスとの関連が認められているから(と、十分なサンプルがあったから)。
また上記の症状について、研究チームは以下のようにコメントしております。
このような症状は、死亡率を含む、長期・短期の様々な健康上の結果を予測することが示されており、健康の重要な指標となる可能性がある。
出典:「Can Work Make You Sick? A Meta-Analysis of the Relationships Between Job Stressors and Physical Symptoms」
やばい職場がもたらすこれら症状が、文字通り体を壊すことに繋がりかねない可能性が示唆されています。
それではそんな「ヤバい職場の7つの特徴」を、それぞれ詳細に見ていきましょう。
7位:Work hours(労働時間の長さ)
まずは労働時間の長さ。
7位というのは結構意外な気もしますが、逆に他の特徴がそれだけ恐ろしいということでしょうかね。
ちなみに具体的にどれくらいの時間で健康に悪影響が出るのか?というところは、別のメタ分析ですが、世界各地から約60万人分のデータを集めた論文が参考になります。(R)
このデータによると、世界共通で以下の傾向が見られました。
- 週の労働時間が41〜48時間になると脳卒中リスクが10%上がる
- 週55時間を超えると脳卒中リスクが33%、心疾患リスクが13%上がる
これが衝撃なのは、厚生労働省の定める過労死ライン(80時間)よりもはるかに下のレベルで体に悪影響があるということ。
突発的な残業は仕方がないですが、なるべく恒常的な労働時間は少なめに抑えたいところですね(とはいえそれが難しいんですが、、、)。
6位:Lack of control(コントロール感がない)
6位はコントロール感の欠如。
コントロール感というのは「従業員が自分の仕事をいつ、どのように行うかをコントロールできる」こと。
- 作業を実行するスケジュールを好きに設定できる
- タスクの内容を好きなように選ぶことができる
- 社内ルールやプロジェクトに対して好きな意見を言える
こういったものですね。
もちろんこれらを全社員が1から100まで全てコントロールできる状態、というのは現実的ではないでしょうが、とは言えコントロール感の欠如が体に害があるというのは別の研究でも繰り返し確認されてきたポイントです。
例えばロンドン大学の研究では、タバコを吸うが仕事の自由度が大きい人より、タバコを吸わないが仕事の自由度が少ない人よりも体を壊しやすく、慢性病にかかる確立も高い傾向があることがわかりました(つまり、コントロール感のなさはタバコよりも健康に悪い)。(R)
業務管理とのバランスを見ながらになるでしょうが、留意しておきたいポイントです。
5位:Role ambiguity(自分の役割が曖昧)
なんだか7位と6位だけで頭が痛くなってきましたが、5位以降も見ていきましょう。
お次は「役割の曖昧さ」。
これは例えば、業績への期待や基準、タスクや職務、スケジュールなどが不明確なために、「自分は何をしたらいいのかわからない」「どうやって仕事を進めたらいいかわからない」みたいになってしまう状態です。
人に聞いたり自分で解決すればよいものの、聞いたところで明確な指示をもらえなかったり、「忙しいから後にしてくれ」みたいに上司に取り合ってもらえない場合などに起こりがちですね。
こうして疑問や不安を持ち続けたまま働き続けると、心身に悪影響があるようです。
4位:Workload(作業負荷が高い)
7位の労働時間に少し近い感じもしますが、この「作業負荷」は時間の長さというより時間あたりの作業量の多さです。
ここには時間あたりの作業量と、作業を完了するために必要な精神的努力のの両方が含まれます。
- 「忙しい過ぎて休憩をとる暇がない」
- 「次から次に期日がやってくる」
- 「会議やら電話対応やらで自分の仕事に全く手がつかない」
みたいな状況にあるとき、作業負荷が高いと言えるてしょう。
労働時間以上に、作業負荷の高さは健康に悪影響を及ぼすようです。
これも一時的には仕方ないかもしれませんが、この状態が長続きしないようにしていきたいですね(それが難しいんですが)。
3位: Interpersonal conflict(対人関係の対立)
対人関係の対立とは、要するにネガティブなコミュニケーションのこと。
瞬間的な意見の相違から激しい口論やいじめに至るまで、さまざまなものがここに含まれます。
ここは直感的にも納得する人が多いと思いますが、やはり職場の人間関係の悪さは心身への悪影響が大。
ちなみにこの研究では上司との対立と同僚との対立をそれぞれ分けて検証していますが、その結果身体症状との関連性の強さにあまり有意差が見られなかったようです(つまり相手が誰だろとネガティブなコミュニケーションは健康面でマイナスになる)。
ネガティブなコミュニケーションは特に競争的な文化のある職場でよくありがちなので、気をつけていきたいところです。
ちなみにこの論文によると、ネガティブなコミュニケーションは特に睡眠障害との相関が高いようですね。
2位:Role conflict(役割の衝突)
2位は役割の衝突。
仕事上の指示に一貫性がなかったり、相反するものだったりする状況です。
具体的には、例えば
- 「ある上司からは1時間以内に資料を作れと言われたのに、別の上司からは今すぐ会議に出ろと言われた」
のように異なる人同士の要求が衝突する場合や、
- 「ある上司から企画書を作れと言われたので進めていたら、1時間後には自分が作ったからもうやらなくていいと言われた」
のように同じ人からの要求に一貫性がない場合です。
これもたまに起こる分には仕方がないですが、頻繁に起こるようであれば混乱を招き、心身への悪影響となる可能性大です。
1位:Organizational constraints(仕事上の制約が多い)
不名誉にも1位に輝いたのは「仕事上の制約の多さ」。
組織的制約には、例えば以下のようなものが挙げられています。
- 仕事を進めるために必要な十分な情報がない
- 十分な時間がない、人手が足りないなどリソースに制限がある
- 仕事を完了するために必要な権限がない
こんな感じで仕事を進めるために必要なリソースや行動が制限されてしまうことです。
管理が厳しすぎたり、実態に合っていない制度体系になってしまっている会社になどにありがちなのではないでしょうか。
ちなみにこの仕事上の制約は、特に消化器官の不調に強い相関があるそうです。
まとめ
そんな感じで南カルフォルニア大学のメタ分析を参考に、「体を壊すヤバい職場の7大特徴」をまとめていきました。
- 7位:労働時間の多さ
- 6位:仕事のコントロール感がない
- 5位:自分の役割が曖昧
- 4位:作業負荷が高い
- 3位:対人関係の対立
- 2位:役割の衝突
- 1位:仕事上の制約が多い
以上の特徴に当てはまる職場環境にいる方は要注意です。
そういえば僕も以前は上の特徴が全て当てはまってた時期があり、その時は確かに体が不調だらけでしたねー(特に頭痛は常にあった)。
ちなみに2015年に行われた別のメタ分析では、以下も特徴がある仕事環境も心身に悪影響があるとされています。(R)
- シフトワーク
- 雇用が不安定(フリーランスを含む)
- 仕事とプライベートの垣根がない(休日に仕事の連絡が来たり、帰宅後も仕事をしているなど)
職場環境の特徴は一朝一夕でどうにかできる問題ではない場合もありますが、どうにもならない時は転職するなどその場を離れることも選択肢になるでしょう。
そんな感じで、くれぐれも無理のない働き方をしていただければ!
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