- 情熱を持って目の前の事に取り組め!
- 情熱を持てるものを追求しよう!
- 熱意がない人は成長しない!
上記のような感じで、何かと耳にすることも多い「情熱」とか「熱意」という言葉。
中には「情熱こそが成功の鍵だ!」みたいに言う人もいますよね。
確かに漫画の熱血系主人公のように、何かに傾ける熱量が多ければ多いほど、成功に近づきやすいようにも思います。
が、ここで疑問なのは「そもそも情熱ってなんだろうか?」と思う方もいらっしゃるんじゃないでしょうか。
「情熱を持て!」とか言われたところで、どうすれば良いのか全く想像がつかない方もいらっしゃるでしょう。
果たして成功するために本当に情熱が必要なのかという話もありますが、それはさておき、
- どんな種類の情熱を持つべきなのか?
- もし情熱を持っていないのであれば、それを育むことは出来るのか?
といったことを見ていきたいと思います。
熱意があるように見える人が、熱意があるとは限らない
「情熱を持っている人」と聞いてどんな人を思い浮かべるでしょうか?
恐らく、多くの人はこんな人を思い浮かべるんじゃないかと思います。
こんな人↓
特徴としては、ハキハキと喋る、行動力がある、表情や発言からしてやる気に満ち溢れている、など。
いずれも、外からでもハッキリ分かりやすい特徴です。
しかし「外側に表れる感情や言葉からは真の熱意は測れない」と、組織心理学者のアダム・グラントは指摘しています。
真の熱意は、外側に表れる感情からはわからない。
言葉や声のトーン、ボディランゲージによって表に出るものは、心のうちに抱いている真意を見定める手がかりにはならず、単にプレゼンテーション・スキルと性格によるものである。
出典:『ORIGINALS』
つまり、「熱意があるように見えるからといって、本当に必要な熱意を持っているかどうかは分からない」ということですね。
一体、ここで言う「本当の情熱」とはどのようなものなんでしょうか?
見せかけの熱意と真の熱意
ハーバード大学の教授であるビル・サールマンは、「どんな場合も、問題はアイデアそのものではなく、実行にかかっている」と言っています。
つまり、「成功のためにどんな行動を取っているのか?」というプロセスの部分にこそ、本当の情熱が表れるということです。
どんなにハキハキ喋ろうが、やる気に満ちた表情をしていようが、どんな夢のあるストーリーを語ろうが、行動が伴っていなければそれは単なる「見せかけの熱意」であると言うことです。
そもそもなぜ情熱が重要なのかと言えば、それは情熱が成長への原動力となるから。
いくら熱量に満ちた発言をしようが、実際に行動に落ちていなければ意味がないですよね。
何だか当たり前の話のようですが、「見せかけの熱意と真の熱意の見極め」は想像以上に難しいもの。
ダニエル・カーネマンの著書『ファスト&スロー』では、人には「速い思考(直感的思考)」と「遅い思考(分析的思考)」の2種類の機能があると言うことが書かれています。
また、ノースイースタン大学教授のシェリル・ミットネスの研究にによると、直感的な思考が強い人ほど、表に出る「情熱」に影響を受けやすいことが分かっています。
直感を重視するスティーブ・ジョブズなんかも、人の表面的な熱意に影響を受けやすかったようですね。
しかし上に書いたように、「行動に対する熱意」と「外側に出る熱意」は別物であり、なおかつ「行動に対する熱意」は、外側には出るとは限りません。
Google社の重役であるエリック・シュミットとジョナサン・ローゼンバーグは、「情熱的な人は、その情熱を袖に引っ下げているのではなく心の底に抱いているのだ」と言っています。
外交的な人は内向的な人に比べて、表情が豊かで感情が表に出やすいと言われています。
確かに漫画の熱血系主人公のような人は、大抵外交的な人のようなイメージはありますね。
しかし、重要なのは「外向的か内向的かは成功の要因としては関係ない」ということ。
(なんなら「内向的な人ほどリーダーに向いているんじゃないか?」って話もあるんで。)
なんで、その人が本当に熱意があるかは「表情や発言ではなく、その裏にある行動を見よう」ということが言えます。
そして自分が何かに取り組むときも、定期的に以下のように考え、具体的な行動に目を向けていくことが重要なのではないでしょうか。
- 自分の目標やビジョンを達成したり自分の価値観を追求するために、自分が取るべき「行動」はどのようなものだろうか?
- この「行動」は自分の価値観に沿ったものだろうか?自分の目標に繋がっているものだろうか?もしそうでなければ、どのように行動を変えれば望ましい方向に進んでいけるだろうか?
- 自分が今まで取ってきた「行動」に見直す余地がある、あるいはより良い「行動」に変えていくことが出来るとしたら、それはどのようなものだろうか?
仕事の情熱は「続ける内に湧いてくる」もの
もう一つ、「熱意はどこから湧いてくるものなのか?」ということを書いていきたいと思います。
「熱意のある」人というのは、生まれつきのものなのか?もし生まれつきなら熱意がない自分は諦めるしかないのか?
というところですね。
「情熱こそが成功の鍵になるなら、情熱を持っていない自分は諦めるしかないんじゃないか。。」みたいに不安に思う方もいるんじゃないかと思います。
結論、今現在何かに対する情熱を持っていなくとも何も問題ありません。
というのも、興味のないことや難しいことをやり遂げることが出来るのは、「情熱は自分の中に眠っている」と考える人ではなく「情熱は何かをやっているうちに自然と生まれてくるもの」と考える人だからです。
これは、心理学で「グロウス・パッション」と呼ばれているもの。
例えば『科学的な適職』で紹介されているイェールNUS大学の研究によると、学生を対象に全員のグロウス・パッションを確かめた後に難しい論文を読ませたところ、「情熱は後からついてくる」という思いが強い学生ほど、難しい論文を最後まで読み通す確率が高かったということがわかりました。(R)
この結果について『科学的な適職』の著者である鈴木裕さんは以下のようにコメントしています。
「情熱は自分のなかに眠っている」と考えていれば、少し気に食わない作業なだけでも「これは違う、自分には合わない」と思いやすくなり、そのぶんだけ簡単に心が折れてしまいます。
他方で「情熱は自ら生み出すものだ」と考えていれば、最初のうちは困難に思えた作業に対しても「もう少し続ければ別の可能性が見えるかもしれない・・・」のような感覚がわき、ちょっとのトラブルにも負けずに取り組むでしょう。
出典:『科学的な適職』
実際に別の研究では、「今の仕事は自分にとって天職だ!」と考えている人の多くは、「なんとなくやっていたら楽しくなってきた」のように、最初から熱意を持っていたのではなく偶然の産物と生まれたという人が大半だそう。
なので、今何かに対する情熱がなくても気に病む必要は全くなくて、まずは自分が嫌ではないと思えるようなことから色々試してみてみるのがいいんじゃないでしょうか。
気がついたらそれが天職になっているかもしれませんね。
そうはいっても「いつか情熱が湧いてくるまで待つなんて無理!」って方が多いんじゃないかと思うので、以下の記事も参考にしてみてください。
まとめ
そんなところで、「情熱ってそもそも何なのか?」というところをまとめていきました。
- 「真の情熱」とは外側から見えるものではなく「その人の行動」に対するものである
- 「情熱」はやっていくうちに自然と生まれるもの
というところでした。
まあここまで書いてきてアレですが、個人的には必ずしも「情熱こそが成功の鍵だ!」という話だは思っていません。
最もスキルの上達が早くて仕事が長く続く人は、熱意を持って仕事をしている人ではなく「仕事は仕事」と割り切っていた人だ、なんて話もありますし。(R)
『RANGE(レンジ)』にあるように、一つの物事に時間をかけるほど成功につながるというわけでもないですしね。
とはいえ、好きで夢中になれる何かが見つかるのであれば、それに越したことはないでしょう。
その場合も情熱そのものを目的として追求するのではなく、
- 自分の価値観を満たす、あるいは目標を達成するための具体的なプロセスに目を向ける
- 色々試してみることで「自分に合いそう、少なくとも嫌ではない」と思えるようなものを探していく
といったことによって副産物として情熱が手に入る、という考えがよろしいんじゃないでしょうか。
僕はド内向な人間で常に周りの熱量に圧倒されがちなんですが、その中でも無理せずマイペースにやっていこうかと思っています。
とりあえずそんなところで。
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