前回の続きです。↓
ざっくり前回の内容をまとめると以下のような感じです。
- 成長して意義ある人生を生きるために困難は欠かせないし、幸福にもネガティブな感情は必要
- しかし強いストレスは心身に甚大なダメージを与え、失敗を過度に恐れる心理や創造性の低下といった悪影響も生み出す
困難は役に立つが、一方で非常に恐ろしい面もあるので注意が必要って感じですね。
厳しさやプレッシャーでストレスを感じるのも、ストレスにより心身の健康が崩れていくのも当然のことなので、その辺りは注視していきたいところじゃないでしょうか。
そういった注意点があることを念頭に置きながら、
- 本当に必要なものは何か?
- 困難以外に人を育ててくれるものはないのだろうか?
- それらを踏まえてどんな場合にどんな困難が有効なのか?
など考えてみたいと思います。
パフォーマンスを高めるにはどんな要素が必要なのか?
①心理的安全性
一つはこのブログでも何度か書いている「心理的安全性」です。
詳細は以下の記事を見ていただきたいのですが、ざっくり言えば心理的安全性は「自分が失敗したり、無知と思われるような行動は発言をしたとしてもこの人たちからは絶対に馬鹿にされないし、何かあれば助けてくれる」というように、心から信じられる状態です。
「心理的安全性」の有効性はいくつかの調査で確認されていまして、以下が有名どころです。
- ハーバード大学教授のエイミー・エドモンドソンが病院を対象に行った調査で、「心理的安全性があるチームは医療過誤の報告は多かったが、ミスの頻度は少なかった」ということがわかった。(R)
- Googleが「プロジェクトアリストテレス」というチームを立ち上げて社内の180の部署を対象に徹底した調査を行った結果、「生産性の高いチームとそうでないチームの最大の違いは、心理的安全性の有無である」ということが分かった。(R)
心理的安全性が高いと失敗にオープンになれるので、思い切ったチャレンジをしたり、失敗を素直に共有してチーム全体で学ぶ、といった行動につながるそうです。
②インナーワークライフ
もう一つご紹介したいのが「インナーワークライフ」という考え方。
これはテレサ・アマビールさんの著書『マネージャーの最も大切な仕事』で語られていたものです。
ハーバード・ビジネススクールの教授として組織の創造性や生産性について日々調査している方ですね。
例えばGoogleのように「企業として成功しており、かつ従業員の幸福度も高い組織にはどんな秘密があるのか?」ってことを調べた結果、「インナーワークライフが重要だということが分かった!」とのこと。
インナーワークライフについて、アマビール先生は以下のように説明しています。
ポジティブな感情、強い内発的なモチベーション、仕事仲間や仕事そのものへの好意的な認識を育める状況を作り出すことだ。
豊かなインナーワークライフとは仕事そのものから得られるものであり、仕事に付随する特典から生じるものではない。
出典:『マネージャーの最も大切な仕事』
「仕事そのものからポジティブな感情を得られる」というのがポイントみたいですね。
「インナーワークが仕事の生産性に関係する!」という話は研究でも裏付けられており、著者が7つの企業238人のビジネスマンを集めて日誌を書いてもらい、集まった12000ものデータを分析したところ、「インナーワークライフが多い日は生産性が高く、仕事への責任感や他人との接し方にもプラスの影響を与える」ことが分かったそうです。(R)
仕事の中で得られるポジティブな感情は、モチベーションも上がるでしょうし、実際に良い行動が増えていくようですね。
このインナーワークライフを増やしていくには、次の3つのタイプの出来事が必要です。
- 進捗:仕事が前に進んでいるという感覚
- 触媒:上司や同僚など、周りの人が仕事を助けてくれる
- 栄養:周りからの励ましや尊重などの対人関係上のサポート
この中でも特に重要なのが「進捗」で、ポジティブな気分を感じた日のうち、実に76%は「進捗」を感じられる出来事が起こっていたとのこと。
ちなみに、よりポジティブな気持ちに相関性が高いのは「進捗度の度合い」よりも「頻度」です。
ちょっとした進捗度合いでもいいので、日々の進捗に目を向けたり、進捗がわかりやすくなる仕組みを取り入れていくのがよろしいんじゃないでしょうか。
まとめ
そんな感じで、「何が仕事のパフォーマンス向上に役立つのか?」といったことを見ていきました。
- 「無知を晒したり失敗してもこの仲間となら大丈夫!」と思えるような安心感(心理的安全性)
- 仕事から得られる内発的なモチベーション(インナーワークライフ)と、小さな日々の進捗
上記のようなことが、仕事でパフォーマンスを発揮したり、その結果成長していくために必要なことなのではないかという話でした。
これまでの話を踏まえると、大事なのは「困難を与える」事ではなく、「困難を乗り越えられるサポートをする」事ではないでしょうか。
「厳しい指導」というものはある意味「意図的に困難を与える行為」だと思いますが、それがなくとも、チャレンジをしていけば嫌でも壁にぶつかります。
その時に、その壁を越えられるようサポートできること、また「思い切ったチャレンジをしても大丈夫!」と思えるような安心感やモチベーションを得られるような環境が重要なのではないでしょうか。
その中で、ぶつかる困難の中で試行錯誤し、失敗から学んで進化していくことが、成長の循環と言えるのではないでしょうか。
ケリー・マクゴニガルさんの『スタンフォードのストレスを力に変える教科書』では、「ストレスや困難は成長の源になる」という主張を展開しつつも、「自分からどんどん苦しめ!という話では決してない」と言っています。
重要なのは、「チャレンジすれば必然的にぶつかる困難を、どう乗り越えていくか」という話であってであって、困難そのものではないんじゃないかなーと思っています。
「困難そのもの」は、あくまで手段であって目的ではないので。
厳しい指導により意図的に困難を与えて「乗り越えれる奴が成長する」「それで潰れるなら仕方ない」みたいに考えるんじゃなくて、
- 「困難により成長できる人とそうでない人との違いには何があるのか?」
- 「その違いは後天的に獲得可能なものなのか?」
- 「獲得可能なら、それを適用することで望ましい結果を再現できないだろうか?」
という感じで考えていくことが重要なんじゃないでしょうか。
なかなか難しいテーマなのでアレですが、今の所はそんな感じです。
また何か情報のアップデートがあれば、更新していきたいと思います。
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