先日の記事で、「ポジティブ情報・ネガティブ情報の効果的な使い分け」について書いていきました。
ネガティブメッセージを軸に据えた「ロスフレーム」、ポジティブメッセージを軸に据えた「ゲインフレーム」というものをご紹介し、
「まずはネガティブなメッセージで注目を集めて」「ポジティブな解決策等を提示する」みたいな流れがいいんじゃないか、というお話でした。
今回から2つの記事に分けて、「ロスフレーム」と「ゲインフレーム」の裏にある、「恐怖感」と「報酬への期待感」という2つのモチベーションについてまとめていきたいと思います。
メッセージや情報が、「人のどんなモチベーションに働きかけ、行動を促しているのか?」という所を見ていければと思います。
「損失回避」「報酬への期待感」から生まれるモチベーション
先日の記事で、ロスフレーム/ゲインフレームのそれぞれがどんな影響を与えていくのか?という事を以下のように書いておりました。
- ネガティブメッセージに焦点を当てて何かを失う恐怖感を煽るのが「ロスフレーム」
- ポジティブメッセージに焦点を当てて何かを得られる期待感を与えるのが「ゲインフレーム」
この「損失回避(何かを失う恐怖感)」と「報酬への期待感」は、どちらも行動に繋がるモチベーションになっていきます。
その裏にはどのような心理が働いているのでしょうか?
今回は一つ目の「損失回避」について見ていきましょう!
損失回避:人は「利益を得る」より「損失を回避したい」思いの方が強い
恐怖感については、例えば行動経済学者のダニエル・カーネマンと心理学者のエイモス・トヴェルスキーが行った、ある有名な研究があります。
この研究では、「人々がどのような選択をするのか?」「なぜそのような選択をするのか?」というものを調べたものです。
以下のシチュエーションにある時、パターン①かパターン②のいずれかで選択肢を提示し、言い回しの違いで選択肢にどのような違いが出るかを見ていきました。
<シチュエーション>
- 自分はある自動車メーカーの重役である
- 経済的な問題から、3つの工場を閉鎖し、6000人の従業員を解雇する必要がある
- 計画には2つの選択肢があり、どちらかを選択する必要がある
<選択肢>
■パターン①
- プランA:3つのうちの一つの工場と2000人の職を救うことが出来る。
- プランB:3つの全ての工場と6000人の職を救える確率が3分の1ある。しかし、工場も職も全く救えない可能性が3分の2ある。
■パターン②
- プランA:3つのうちの2つの工場と4000人の職が失われる。
- プランB:3つの全ての工場と6000人の職が失われる可能性が3分の2ある。しかし、全ての工場と職を救える可能性が3分の1ある。
皆さんならパターン①とパターン②で、それぞれどちらを選択しますか?
お気づきかもしれませんが、パターン①とパターン②は、言い回しが違うだけで実態としては全く同じことを言っています。
前者は「確実に得るものは何か」という視点で、後者は「確実に失うものは何か」で書かれている、ただそれだけの違いですね。
言い回しの違いだけで実態としては変わらないので、選択の結果に違いは生まれないのでは?と思います。
が、結果はパターン①では80%の人がプランAを選択したのに対し、パターン②では82%の人がプランBを選択しました。
言い回しの違いだけで、人々が好む選択が逆転してしまったのです。
「確実に得るもの」が提示されたパターン①では、「リスクを回避したい」という強い感情から、リスクのないように見えるプランAが選ばれる。
逆に「確実に失われるもの」が提示されたパターン②では、「なんとしてでもリスクを回避したい」という思いから、全てを救える可能性のあるプランBが選ばれる。
つまり、「損失を回避したい」思いが、人が何かを選択する時の強いモチベーションになることがわかります。
上記の研究は、最終的には「プロスペクト理論」として、ノーベル賞受賞に至りました。
まとめ
というところで、人の行動を促すモチベーションの一つである「損失回避」についてまとめていきました。
ノーベル賞受賞に至ったダニエル・カーネマンとエイモス・トヴェルスキーによる共同研究の事例から、「人は損したくない思いが強く、リスク回避的な選択肢が好まれやすい」ことを見ていきました。
よく商品の広告とかで見る「期間限定!」みたいなものも、ある意味「この期間を逃すとこの商品は手に入りませんよ!=今買わないと損するよ!」という広告になるので、よく出来た仕組みだなーとか思います。
あまり恐怖を煽るようなことはしたくないですが、どうにかいい形で活かしていければなーと思いました。
次回の記事では、行動を促すもう一つのモチベーションである「報酬への期待感」についてまとめていきたいと思います。
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