先日『RANGE(レンジ)知識の「幅」が最強の武器になる』の要約記事を書いていきました。
今回は『RANGE』を読んでの感想や考察などをまとめていきたいと思います。
詳しい内容は上の記事を読んでいただければと思うのですが、『RANGE』の要点をすごーく簡単にまとめると以下のような感じです。
- 幅広い知識や経験が、クリエイティビティを発揮する鍵になる。
- 「早く効率的に」学ぶより、「ゆっくり非効率に」学ぶ方が効果的である。
- 自分の色々な可能性を試すことで、自分に最適な仕事を見つけることが出来る。
「結局色々試してみないことには何が自分に合っているかは分からないし、視野も狭くなってクリエイティブな発想も出来なくなるよね」ということで、幅広い知識を身に付けたり、色んな分野での経験を積むことが推奨されています。
幅広く学んだり経験するのが重要なのは、『RANGE』にある通り。
とはいえ、ここで疑問になってくるのは
- いくら「幅」が大事とはいえ、無計画にひたすら経験の幅を広げていってもいいものなのだろうか?
みたいなところなのかなと思います。
『RANGE』で紹介されていたファン・ゴッホのように、情熱の向くまま教師・書店の販売員・牧師・伝道師などを経て最後に画家として大きな花を咲かせた、というような事例もあります。
しかし一方で、無計画に色々なものに飛びついた挙句、何も身につかず時間だけを浪費する結果になってしまう、といった大きなリスクもあるのではないでしょうか。
現実問題として、手元に残るしっかりとしたスキルや経験がない場合、転職市場で厳しい評価を受けることになるでしょう。
そういうこともあり、例えば『人生は20代で決まる』でも、しっかりとしたアイデンティティキャピタル(自分の資産になるようなもの)を若いうちに築いていくことを推奨しています。
幅広い分野で経験を積みそれをうまく活かすことが出来れば、クリエイティビティや自分の適性を見極める意味で大きなメリットになります。
しかし一方で、経験をうまく活かすことが出来なければ、手元に何も残らずただ時間だけを浪費してしまう結果になりかねないというリスクを抱えているのも事実。
そんな中で、「如何にリスクを抑え、幅広い分野での経験を積んでいくか?」ということを考えていきたいと思います。
「どのタイミングで動くべきか?どの方向に向かうべきか?」ということを考える参考になれば幸いです。
完全に個人の考えになってしまい恐縮ではありますが、極力リスクを抑えつつ、『RANGE』にある「知識や経験の幅を広げるメリット」を得るために重要だと考えるポイントを3つに絞ってまとめていきます。
ポイント①:リスクポートフォリオのバランスの中で経験を積む
今回の話で個人的に一番ポイントになるかなと思っているのがこの「リスクポートフォリオのバランス」です。
リスクポートフォリオは投資の世界なんかで聞く言葉ですが、ここでいうリスクポートフォリオは「ある分野でリスクのある行動を取ろうとするなら、別の分野で安全な道を確保することで、全体的なリスクのレベルを弱めようとする」考えのことです。
これは著名な組織心理学者アダム・グラントさんが著書『ORIGINALS』の中で紹介していた考え方。
リスクポートフォリオについては以下の記事にまとめているので詳細はこちらを見ていただければと思うのですが、
例えば『ORIGINALS』の中で紹介されている研究によると、「本業を辞めて起業をした場合、本業を続けたまま副業として起業した場合に比べ、倒産する確率が33%高かった」ということが分かっています。
普通に考えると、本業を辞めて時間や労力を一点集中的に投入した方が成功確率が上がるように思ってしまいます。
が、実際はそれ以上に安定を確保している「安心感」があることで、別の分野で思い切った冒険をすることができるというメリットが大きいようです。
人間は基本的に損失を嫌う生き物なので、「安定」がない状況ではどうしても保守的な行動に走ってしまい、結果として上手くいかないケースが多いんじゃないかと考えられます。
なので最悪のケースを想定し、その最悪の事態が起こっても逃げ道となるような安定を確保しとく、という状況の中で「幅」を広げていくのが重要なんじゃないかと思っています。
具体的には、例えば以下のようなものが考えられるのではないでしょうか。
- 経験を積みたい分野の仕事を「副業」として始め、自分に合いそうならそれを本業にする
- 軸ずらし転職をすることで、既存のスキルを活かしつつも新たな分野や役割での経験を積む
副業であれば比較的低リスクで出来るものも多いですし、自分には合わないと思ったら辞めればいいだけ。
このように安定を確保しつつ余力のある中で経験の幅を広げていくというのが、低リスクで「幅」を広げていく上での大きなポイントになるんじゃないかと思います。
ポイント②:計画を立て、その計画を頻繁に「考え直す」
続いてポイントになるかなと思うのが、計画をモニタリングしていくこと。
重要性ではむしろ、これが一番かなと思っています。
なんだか当たり前の話のようですが、「考え直す」ことが私たちにとって想像以上に難しいというのは『THINK AGAIN』にある通り。
先述のアダム・グラントさんは、年に2回キャリアのセルフチェックを行うことを推奨しています。
- 今の自分はどこに向かっているんだろうか?このままいくとどこに到達するんだろうか?それは果たして自分が望むものなのだろうか?
- 今の自分の志はいつ立てられたものなのだろうか?自分はそれ以降、どのように変わっただろうか?自分の変化を踏まえ、方向転換を図るべきだろうか?
このような質問への回答を考えていくことで、「自分が望まない方向に進んでいないか?方向転換が必要なんじゃないか?」ということを考えていくわけですね。
また、『科学的な適職』にあるように、人間の脳はバイアスまみれなのでいくら気をつけても正しい判断をするのは難しいもの。
なので時には友人などに頼り、自分のキャリアに対してフィードバックを求めるのがいいんじゃないかと思います。
やっぱりより客観的な判断が出来るのは第三者ですからね。
ちなみにアメリカのロミンガー社の研究によると、最も正しいフィードバックをもらいやすいのは「知り合ってから1年〜3年の友人」だそうです(知り合ってからの期間が短すぎると情報が足りないし、長すぎると私情が入って本音を言わなくなる傾向がある)。
上記の質問や友人からのフィードバックを通じて、「幅を広げるために今動くべきか?まだ残るべきか?動くとしたらどこに向かうべきか?」ということを頻繁に「再考」していきましょう。
ポイント③:あらかじめ「引き際」を決めておく
最後のポイントは「引き際」を決めておくこと。
キャリアの失敗でありがちなのは、例えば以下のようなものがあるのではないでしょうか。
- 明らかにうまく行っていない中で、ずるずると同じ会社に残り続けてしまう
- 逆にまだ動くべきでないタイミングで動いてしまい、結果身についたものが少ない
こういった事態を防ぐために必要なのが、「どのタイミングでどんな場合に方向転換のため行動するか?」という、「停止ルール」を決めておくことです。
- ここで何を学びたい、あるいは身につけたいのか?それは何を持って出来たと判断するか?
- どんな失敗や問題が起こると想定されるか?その時に身を引くかそのまま残るか?身を引くためにはどんな条件が必要でそのためにどんな準備をしておくべきか?
新たなことを始める時に予め上記のような考えておき、「辞める基準」を決めておくことで、ずるずると残り続けてしまったり、望ましくないタイミングで動いてしまうことも減っていくでしょう。
また、「辞める」というカードをいつでも切れるように、次の方向転換に必要な準備を少しずつでも進めていくことも必要ではないでしょうか。
もちろん、最初に決めた基準が正しいかどうかは状況により変わってくるので、ポイント②と合わせて「引き際」も定期的に見直していくことが必要なんじゃないかと思います。
まとめ
今回は「極力リスクを抑えながら知識や経験の幅を広げるためのポイント」についてまとめていきました。
ざっくりポイントをまとめると以下のような感じです。
- 副業や軸ずらし転職により、「リスクポートフォリオのバランスが取れた状況」の中で新たな分野での経験を積む
- 自分が向かうべき方向を、友人からのフィードバックなどを通じて定期的に「再考」する
- 「停止ルール」を決めておくことで、最適なタイミングで方向転換するための条件を決めたり方向転換の準備を進める
極力リスクの低い状況の中で幅を広げ、自分がどこに向かっているのか定期的に見直しを図ること。
当たり前といえば当たり前の話かもしれませんが、上記のようなことが重要になってくるのではないでしょうか。
個人的にも幅広い分野での経験を積むのは大賛成ですし、自分自身そうしていこうかと思っています。
リスクを抑えつつも、『RANGE』にあるような知識や経験の幅を広げるメリットを最大限に享受していけるよう、色々と試しながらやっていければいいなーと思います。
そんな感じで!
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