神話▶︎同時に複数のことをこなさなければ、生活は立ちゆかない。
現実▶︎日々の仕事をこなしたいのなら、「いまここ」に完全に集中するしかない。
出典:『SINGLE TASK 一点集中術』
- マルチタスクが欠かせない!
- 仕事ができる人はみんなマルチタスクで仕事を進めている!
マルチタスクといえば、仕事が出来る人の象徴のようなもの。
マルチタスクをすれば、複数の仕事を同時に進められるので、膨大な仕事があっても効率的に仕事を進めることが出来る。
忙しい現代では、もはや「マルチタスク」は必需品である。
そんな風に思っていませんか?
本書は現代に根付いた「マルチタスク神話」を払拭し、多忙な時にこそ必須の「一点集中術(シングルタスク)」について書かれた本です。
サクッと読める分量でありながらも実用的な知見が簡潔にまとめられていて良かったので、まとめてみました。
本書の中でも個人的に勉強になったポイントをまとめていきたいと思います。
なお、以下の要約は自分の言葉に置き換えながらまとめていますので、本書の正確な表現を知りたい方はぜひ本書を読んでみてください!
この本は以下のような人におすすめです。
- とにかく毎日が忙しい。
- 仕事をいくら消化しても終わりが見えず、疲れている。
- 毎日頑張って仕事をこなしているのに、全く前に進んでいる気がせず、達成感が得られない。
本の概要
本書は多忙な現代での必需品である「シングルタスク」の極意を、脳科学や心理学の知見を踏まえて書かれた本です。
以下の章で構成されています。
INTRODUCTION:シングルタスクの原則
– Part1:原則を固める
- 第1章:マルチタスクを封印するー「同時進行」の誘惑から逃れる
- 第2章:すべてを一気にシンプルにするー「一点集中術」とは何か?
– Part2:行動を変える
- 第3章:脳の「集中力」を最大化するー脳がエネルギーを出せる環境をつくるー最大の成果をもたらす1日の行動法
- 第4章:全行動を「1つずつ」にするー最大の成果をもたらす1日の行動法
- 第5章:5分で周囲の「信頼」をつかむー「ノー」を言うことで人望を集める
– Part3:定着させる
- 第6章:賢者の時間術「タイムシフト」ー「最重要課題」を攻略する
- 第7章:継続する方法ー24時間「いまここ」にいつづける
著者はコーネル大学ジョンソンスクールの客員教諭を15年以上務め、メンサやロンドン・ビジネススクール・デロイトなど名だたる企業や団体へリーダーシップやチームマネジメントの指導も行うデボラ・ザックさん。
教授にコンサルタント、執筆活動など多種多様な活動を行い、まさに多忙を極めに極めている著者だからこそ、マルチタスクではなくシングルタスクで仕事をすることの重要性を主張しています。
一体どのような内容なのでしょうか?
早速見ていきましょう!
マルチタスクの問題点
- そもそも、マルチタスクは神経学的に不可能である。スタンフォード大学の神経科学者エヤル・オフィル博士によると、人がマルチタスク行為をしているとき、複数のタスクを同時にこなしているわけではなく、実際には注意する対象を頻繁に変えているだけであるという。つまり、人間の脳は一度に複数のことに注意を向けることは物理的に不可能なのである。
- タスクの切り替え頻度の高さは、生産性の低さと相関関係がある。ハーバード大学の研究によると、「忙しなく働いている社員たちは1日に500回も注意を向けるタスクを変えるが、最も能率の高い社員たちは注意を向けるタスクを変える回数がむしろ少ない」という。このようなことは、注意の切り替えの度に集中力が落ちるために起こる。また同じくハーバード大学の研究によれば、このように注意を分散させると情報を記憶しづらくなるという。
- 例えば歩きながら人と話すなど、少なくとも一方が意識的な努力をしなくてもできることであれば、メインの作業と同時に行うことができる。しかし、ちょっとでも集中して取り組む必要がある作業を2つ同時に行おうとすると、前頭前野のリソースを2つの作業が取り合うことになり、その結果として、両方の作業とも集中することができなくなってしまう。
- また、外部からの多数の刺激に反応し続けると、前頭前野が過剰なストレスに晒され縮んでしまう。マルチタスクを試みると、闘争・逃走反応によりコルチゾール(ストレスホルモンの一種)が分泌され、脳が萎縮し、あらゆる能力が低下することがわかっている。
- このようにマルチタスク行為は注意散漫になり生産性を下げるだけでなく、ストレスを与え、また認知処理能力を妨げることでより深い学習を妨げてしまうのである。だからこそ、忙しい時にこそ、シングルタスクが「必需品」なのである。
シングルタスクのやり方
シングルタスクの基本的な考え
- シングルタスクの基本は、「決まった時刻が来るまでの間、他の要求に一切応じず、1つの作業だけに専念する」というもの。例えば「10時の資料締め切りまでの時間は、メールもチャットも一切見ない」「目の前の同僚とディスカッションをしている間は、誰からの電話であろうと電話に一切出ない」など。
- 1つの作業に没頭すると「フロー」の状態が生まれる。この状態になると特定の行為に完全に集中し、より高い能力を発揮できるようになる。「一つの作業に没頭する」状態になれば、自然とシングルタスクをすることになる。
具体的なやり方
- シングルタスクの基本的なテクニックは以下のようなものがある。
- 集中して作業する必要があるときは、会議室などに籠城する時間を作り、邪魔が入らないようにする
- チャットやメールなどの通知を切る(1日3回とかでまとめて見る時間を作る)
- 誰かと打ち合わせや話をしている時は電話に出たりしない
- 打ち合わせなど何をするにしても時間をきっちり決めてやる。予定はなるべく短時間で設定し、その代わりにその時間でやりきる。
- 数少ない重要な仕事と大量のそうでない仕事を見極め、後者に対して「ノー」という技術を身につける。(このテクニックについては『エッセンシャル思考』がおすすめ)
- 要するに「1つの物事に集中できる」環境を作ることが重要である。
- 仕事や学習に取り組んでいる時、ついつい気が逸れてしまいシングルタスクにならなくなってしまうことがある。そんな時は頭に浮かんだことをメモし、一旦忘れ、作業が終わった後で対応するという方法が良い(頭に浮かんだことをメモするくらいならマルチタスクにはならないので問題ない)。
- 仕事が溜まりに溜まってしまった時も、「シングルタスクで一点集中」することで消化するのがよい。具体的には、以下のような方法がある。
- 類似タスクをまとめて処理する(メールとチャットを全てまとめて返す等)
- 1×10×1ルールを活用する(1分でできる仕事はすぐやる、10分でできる仕事を1日の早い時間にやる、1時間以上時間がかかるタスクは2日〜3日に配分してやる)
- また、休息を取ることも重要である。適度にリラックスする時間を入れ、充電した後の方が能率が上がることは科学的に繰り返し立証されている。「タイムシフト」という、生産性の高い時間とリラックスした時間を交互に繰り返す手法は特におすすめ。
- 以上のようなことを取り組んでも、多忙な現代ではついついマルチタスクに走ってしまうこともある。そうならずにシングルタスクを徹底出来るよう、日々のシングルタスク度をモニタリングするのが良い。具体的には、チェックリストなどを作り、取り組みをどれだけ徹底できたか毎日1日の終わりに振り返りをする(例:メールを見る回数を1日3回までに制限できたか?)。あとは実践あるのみ。
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