このブログではなるべく過去の研究などで効果が認められたものや、試してみる価値があるんじゃないかと思えるようなものを扱っていこうとしております。
とはいえ科学的根拠があるといってもその信頼性はまちまち。
なんで、根拠となるエビデンスの種類によって信頼性を判断出来るようにという事で、自分でも整理してみようとまとめていきます。
そんな中で、「エビデンスのピラミッド」に沿って整理するのが一番分かりやすいかと思うので、このブログで取り上げるであろう項目を中心にまとめてみました。
「エビデンスのピラミッド」は見るものによって微妙に構造が違うんですが、『超リテラシー大全』という本にあるものが分かりやすかったので、その内容を元にしようかと思います。
以下がエビデンスのピラミッドです。
それぞれの項目の一部を抜粋してご紹介していきます。
メタ分析(メタアナリシス・システマティックレビュー)
エビデンスの中でも最も信頼性が高いのがメタ分析です。
メタアナリシスとか、システマティックレビューとかとも呼びますね。
メタ分析は過去に行われた複数の研究を精査して一つの大きな結論を出す手法です。
単体の研究だけだとどうしても偏りがあったり、別の研究と食い違いが出てきてしまうんですが、複数のデータを集めて精査する事でより精度の高い答えを出来るようになっていきます。
また、精査する対象の信頼性が高いほどメタ分析の結果の信頼性も高くなります。
例えば同じメタ分析でも後述するRCTを精査したものの方が、観察研究を精査したメタ分析の方が信頼性が高いわけですね。
このブログで過去に取り上げたものだと、例えば下記の「メッセージを繰り返すほど単純接触効果が働いて好印象になる!」というのがありますね。
ランダム化比較試験(RCT)
メタ分析の次に信頼性が高いのがランダム化比較試験(RCT)です。
RCTは以下のイメージで、被験者をランダムに複数のグループに割り振り、各グループ間での結果の違いを検証していきます。
- AグループにはXXというサプリを飲んでもらう。
- Bグループにはプラセボ(中身のない薬)を飲んでもらう
こんな感じですね。
検証したい要因以外の変数が比較的少ない分、信頼性の高い手法です。
例えば以下の記事でご紹介した企業家を対象にした研究なんかは、RCTでデザインされていますね。
また、RCTは参加者の数や実施期間が長くなるほど、信頼性は高まります。
大規模なRCTで効果が認められたものなんかは、結構試してみる価値があるんじゃないかと思います。
非ランダム化比較試験(NRCT)
RCTに次ぐのが非ランダム化比較試験(NRCT)です。
デザインはほぼRCTと同じなんですが、被験者を複数のグループに分ける際にランダムではなく意図的に分けていく点に違いがあります。
各グループの被験者の性質(性別・年齢とか)を恣意的にコントロールできる分、RCTに比べると信頼性は低くなる点が、RCTとの違いですね。
観察研究(コホート研究/ケースコントロール研究)
続いて信頼性が高いのが観察研究です。
観察研究の中でも「前向き研究」と「後ろ向き研究」というものがあるんですが、この2つは時間軸に違いがあります。
現時点から未来に向けてデータを収集するのが「前向き研究」、現時点から過去に遡って調べるのが「後ろ向き研究」です。
「前向き研究」の代表例が「コホート研究」で、以下のようなイメージで調査をしていきます。
- ある病気の要因と疑われる状況にいる患者とそうでない患者を分ける
- それぞれのグループを追跡し、結果的に病気になるかどうかを確認する
- 病気になった原因は、その要因によるものなのかそうでないのかが分かる
一方、「後ろ向き研究」の代表例が「ケースコントロール研究」で、以下のイメージです。
- ある病気にかかっている人とそうでない人をピックアップする
- それぞれの過去の習慣などを調査し、病気にかかっている人に共通する要因がないかを調べる
例えば「タバコをよく吸う人は肺がんになりやすい」ということを調査したいとき、
- コホート研究:タバコをよく吸う人とそうでない人を将来数年間にわたって追跡する→タバコをよく吸う人は肺がんになる確率が高かった
- ケースコントロール研究:肺がんの人とそうでない人の過去の習慣を調べる→肺がんの人はタバコをよく吸う傾向が高かった
といったイメージでしょうか。
観察研究は調査したい変数に左右されやすい点が難点で、変数の少ないRCTやNRCTと比べると信頼性は低くなります。
例えば、「白米をよく食べる人は玄米をよく食べる人よりも」というデータがありますが、
米国や英国、北欧などの研究(78万6000人が対象)を統合解析したメタアナリシスによれば、茶色い炭水化物を1日70グラム摂ったグループは、ほとんど摂らなかったグループよりも、死亡率が22%低下しました。7つの研究を統合解析した別のメタアナリシスでは、茶色い炭水化物の摂取量が多い(1日に2.5単位以上)グループは、摂取量が少ない(1週間に2単位未満)グループに比べて、心筋梗塞や脳卒中といった動脈硬化によって起こる病気になるリスクが、21%も低かったのです。
出典:「白米は健康に悪い」科学データに基づく健康に良いもの・悪いもの」
このデータだけだと「それって玄米をよく食べる人は普段から健康意識が高いってだけなんじゃないか?」のように、別の要因の可能性も考えられますよね。
健康意識が高い人ほど、野菜をよく食べたり習慣的に運動したり睡眠を重視するので、むしろそっちに要因があるんじゃないか?とか考えられるんじゃないかと。
もっとも、上で引用したものは78万人分のデータを集めたメタ分析という事なんで信頼性は高いものです。
なので、「とりあえず白米より玄米の方が良さげ」と言えるとは思いますが、こんな感じで別の要因の可能性も考えながら信頼性を判断していく必要がありそうです。
専門家の意見
ピラミッドの下の方に位置づけられるのが専門家の意見。
まあ専門家も何らかの根拠に基づいての発言なので、結局「その根拠な信頼性出来るものなのか?」というものを見ていく必要がある、という事なんでしょうか。
とはいえ誰でも手軽に信頼性の高いエビデンスを手に入れられる、というわけではないですし、専門家の意見を参考にするのは全然アリなんじゃないかと思います。
もし知り合いに何らかの専門家がいる方なんかは、自分の疑問に対して直接フィードバックをもらえる、というのも利点ですね。
ランク外:個人の経験
上のピラミッドにはないですが一応。
個人の経験は限られたサンプルになってしまうので、ピラミッドにあるようなエビデンスと比べると信頼性は低いです。
しかし経験談のいいところは、
- 行動のイメージしやすい!
というところなんじゃないかと思います。
理論だけ見ててもも「結局どうしたらそれを役立てることが出来るのか?」というのは難しいところなんじゃないかと思います。
その点、実際に自分がやったことや他の誰かが実践した方法は参考にしやすいんじゃないでしょうか。
このブログでもたまには経験談の話を上げていければなと思います。
まとめ
そんな感じで、エビデンスのピラミッドをベースに研究内容ごとの信頼性をまとめていきました。
もちろん、一番上のメタ分析だからといって100%信頼出来るというわけではないですし、ピラミッドの下の方だからといって全く信頼出来ないわけでもないですが、目安としてはよろしいんじゃないかと思います。
こういう基準があれば、自分が何か参考にするときの判断材料になるんじゃないでしょうか。
そんなところで。
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