人生で最も永続的でしかも緊急の問いかけは、「他人のために、いまあなたは何をしているか」である。
-マーティン・ルーサー・キング・ジュニア(アフリカ系アメリカ人公民権運動指導者)
- 「せっかくならやりがいのある仕事をしたい!」
- 「人や社会に貢献出来る仕事がしたい!」
- 「社会人になったら多くの時間を仕事に使うんだから、ポジティブな気持ちになれる仕事がしたい」
みたいなことを、誰もが一度は考えたことがあるんじゃないでしょうか。
そうは言っても、「やりがいのある仕事って一体何なんだろう?」というのは何とも難しいところ。
何があればやりがいを感じるのか、ってのは人それぞれですからね。
今の仕事をつまらないものだと感じていたり、仕事が辛いものだと感じている人にとっては、
- 「仕事を通じて自分が幸せを感じることなんて、本当に出来るんだろうか?」
といった疑念もあるでしょう。
一方で「どんな要素があれば、人は仕事を通じて幸せになれるんだろうか?」みたいな話は、過去の研究を通じて少しずつ明らかになっています。
この記事では「仕事を通じて幸せを感じられる」ための1要素であり、かつ重要なポイントである「ヘルパーズハイ」について見ていきたいと思います。
また、
- 「やりがいのある仕事がしたい!」
- 「仕事を通じて幸せになりたい!」
という人には以下の本もおすすめなので、こちらも併せてぜひ参考にしてみてください。
今回の記事で取り上げる「ヘルパーズハイ」を始め、仕事を通じて人生の幸福度・満足度を上げるために役立つ話が紹介されています。
ヘルパーズハイについて
ヘルパーズハイとは?
ヘルパーズハイは、「人に親切をすることで、自分の幸福度が上がる」という現象を指した心理学用語です。
人助けをすることで、自分も幸せを感じられるということですね。
脳科学では、親切な行いをすることで脳の報酬中枢が活性化し、ドーパミンが大量に分泌されることがわかっています。
ドラッグやアルコールなどに頼らなくても、良い気分になれる(「ハイ」になれる)ということで、「ヘルパーズハイ」と呼ばれていたり。
嘘みたいな話かもしれませんが、ヘルパーズハイの効果を示した調査・研究がいくつかあり、例えば以下のようなものです。
- 24歳以上のアメリカ人2800人を対象にしたある調査において、ボランティア活動をすると、活動から1年後の幸福度・人生の満足度・自尊心が高まり、うつ病が軽減した。
- ある実験では、「他人への小さな親切」を1日5回ずつ6週間ほど続けた被験者に大きな幸福度の向上が認められた。
- 心理学者のエリザベス・ダン、ラーラ・アクニン、マイケル・ノートンらが行った調査で、被験者たちに20ドルの入った封筒を渡し、その日の午後5時までに使うように指示した。その結果、自分のために20ドルを使った人たちは幸福度の向上が見られなかったのに対して、他の人のためにお金を使った人たちの間では、幸福度がかなり上がったとの報告がされた。
3つ目の話なんかは普通に考えたら自分のためにお金を使った方が幸せになれそうなものですが、他の人のために使った方が幸福度が高くなる(しかも圧勝!)だったというのは意外だなーと思います。
また、259の研究を精査したミシガン州立大学のメタ分析では、「幸福を感じやすい価値観はどんなものなのか?」ということを調べてくれており、そこでわかったのは「”他者の役に立つことをする“価値観が、飛び抜けて幸福度への影響が高かった」ということでした。(R)
「他人へ親切な行いをすることで幸せになれる!成功に繋がる!」といった話はアダム・グラントさんの著書『GIVE&TAKE』でも強調されていた話で、改めて親切の素晴らしさが実証された感じですね。
なぜ親切な行いが幸福度の向上につながるのか?
ところで、こうした親切な行いをすることで、なぜ幸せを感じられるのでしょうか?
そこには、人間の持つ以下3つの欲求が満たされることが理由だと考えられています。
- 自尊心:他人の役に立ったことで、「自分は有能なんだ!」と感じられる
- 親密感:親切のおかげで相手と近くなったように感じられ、孤独感がやわらぐ
- 自律心:自分から親切をすることで、「自分で自分の幸せを選択出来た」という感覚が生まれる
「人との繋がり」や、「コントロール感(自分で自分の人生をコントロール出来ている感覚)」は幸せを感じるために重要な要素で、こういった感覚が生まれる事が、親切により自分も幸せになれるという訳ですね。
ここまでで「ヘルパーズハイ」の素晴らしさを見ていきましたが、仕事においても、「ヘルパーズハイ」により幸福を感じることは出来るんでしょうか?
ヘルパーズハイになれる仕事で幸福度は上がるのか?
誰かのための行動が仕事の満足度を上げる可能性を示した調査
その可能性を示したのは、『科学的な適職』で紹介されている、シカゴ大学が2007年に行ったメタ分析です。
男女約5万人を集めたリサーチで、「職業と仕事の満足度の関係性」を調べたものです。
「仕事に対する満足度が高いのは、どんな職業の人に多いのか?」という事を調べた訳ですね。
結果、「仕事の満足度が高い職業TOP5」は、以下のようなものでした。
- 聖職者
- 理学療法士
- 消防士
- 教育関係者
- 画家・彫刻家
一見すると上記の職業はバラバラで、「満足度を高めるための共通点」が無いように思います。
が、これらの職業に共通するのは、
- 他の人への親切な行いをする仕事である
- 他の人へ新たな知見を与える仕事である
- 他の人の人生を守る仕事である
上記のいずれかに該当するものです。
いずれも、「他の誰かのため」というのが軸にある仕事ですね。
仕事においても、親切な行いによりヘルパーズハイになり、幸福度を上げることは出来そうです。
ヘルパーズハイになるために重要なポイント
ここで重要なのは、ヘルパーズハイになれるかどうかは、
- 自分自身が仕事を通じて「誰かの役に立っている」という感覚を得られるかどうか
にあるというところ。
「その職業はヘルパーズハイになれるのか?」ではなく、「自分自身が他の誰かへ貢献できていると感じるられるか?」がポイントになってくるわけですね。
言ってしまえばどんな仕事も、誰かから必要とされているからこそ存在しているものです。
しかし、本質的に人の役に立つ仕事なのかどうかと、ヘルパーズになれる仕事なのかはまた別の話。
その点で言えば、「他の人への貢献が分かりやすい」というのは重要で、「教育関係者」や「理学療法士」が、仕事の満足度の高い仕事に来るのも納得ではあります。
ただ逆に言えば、どんな仕事であってもヘルパーズハイになれる可能性はあるということ。
なんで、「自分の今やっているこの仕事が、誰にどう役に立っているんだろうか?」という点を考えてみるのがいいかもしれませんね。
ヘルパーズハイになれる可能性の高い職業
どんな仕事でもヘルパーズハイになれる可能性があるとはいっても、「他人への貢献が分かりやすい」ほどその可能性が高まるのは間違いないところ。
最後に参考として、ヘルパーズハイになれる可能性が比較的高いと考えられる職業を紹介していきたいと思います。
僕自身の独断と偏見もありますが、何かの参考になれば幸いです。
①教育関係
まずは上でご紹介したランキングでも4位にランクインしていた、教育関係の仕事。
「人に新たな知見を与え、人の成長に寄り添い、人をより良い方向に導いていく」というのは、分かりやすい他人への貢献の仕方なんじゃないかと思います。
学校の教師や部活動の顧問、学習塾の講師のような職業はもちろん、会社の上司として部下を育てる立場であったり、人事や人事系の企画の仕事なんかも、「誰かのため」の仕事を通じて、ヘルパーズハイを感じやすいのではないでしょうか。
②警察官・消防士
消防士については、上でご紹介したランキングでも3位になっていますね。
警察官や消防士といった仕事は、人々の生活を守る仕事。
貢献している感覚を得る仕事としては、かなり分かりやすいんじゃないでしょうか。
他にも人々の生活を守る仕事という点で、ボランティア活動や弁護士なども、ヘルパーズハイを感じられるんじゃないかと思います。
③介護福祉・医療関係
最後に上げるのが介護・医療関係の仕事。
これらは人々の世話をしたり、人の健康や命に関わるような仕事。
分野によっては激務になることもあるものの、これまた「世の中へ貢献している感覚」を得られやすいんじゃないかと思います。
医療関係であれば様々な分野、例えば心理カウンセラーなどのように心の健康状態に関わっていくような仕事も含めて、ヘルパーズハイを感じやすいんじゃないかと思います。
ヘルパーズハイになれる職業を探すときに確認したいこと
そんな感じで、ヘルパーズハイってそもそも何という話から、ヘルパーズハイになれる職業の例をまとめていきました。
誰かのためになる行動で、自分自身も幸せになれるっていうのは、希望の持てる話でいいなーと思いますね。
上にまとめた職業以外にも、自分が「世の中や他の誰かの役に立っている感覚」を持てるのであれば、ヘルパーズハイになり、仕事を通じて自分自身の幸福度も上がっていくんじゃないかと思います。
また、職業だけではなく、その企業の価値観や文化によっても「どれだけヘルパーズハイの感覚を持ちやすいのか」という点は変わってくるかと思うので、これから仕事を探していくのであれば、是非色んな企業を見ていくのがいいのではないでしょうか。
もし、これからヘルパーズハイになれる職業や企業を探していく場合には、面接時やエージェントに以下のようなポイントを確認してみるのがいいと思います。
- その企業は、どのような価値をどのような考え方で、社会や他の誰かに提供しようとしているのか?
- その考え方を実現するために、どのような行動や仕組化をしているのか?
重要なのは考え方だけでなく、仕組みまでを見ていくこと。
「我々は顧客第一主義です!」「私たちの企業は社会へ貢献していきます!」「顧客の視点で考えます!」みたいなことは、どの企業も当たり前のように言う事ですからね。
仕組みや行動といった事実を見ていくことで、ちゃんと言動が伴っているのか?ということを確認していくのが重要なんじゃないかと思います。
企業ごとの色が出るのも、結局はその部分ですし。
また、もし上司の立場にいる人であれば、部下が自分の仕事が人の役に立っていることを感じられるようにサポートしてあげると、部下の幸福度が上がったり、モチベーションが上がってパフォーマンスも上がったりということにつながるんじゃないでしょうか。
そういった形で、親切や優しさの輪が広がっていけばいいなと思ってます。
そんな感じで!
この記事でご紹介した本↓
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