「いつも時間が足りず、何かに追われている」
「もっと大切なことに使う時間を増やしたい」
「限りある人生、このままの過ごし方でいいのだろうか」
時間の使い方に満足していないすべての方へ。
出典:『YOUR TIME』
「時間が足りない!」「もっと時間をうまく使いたい!」
このような悩みを持っている方は多いではないでしょうか。
- 仕事が全然終わらない!もっと時間があれば、こんなに焦らなくてもいいのにな、、
- あれもやりたいしこれもやりたい。もっと時間をうまく使えたら、全部できるんだけどな、、
恐らく誰もが、一度はこのように考えたことがあるのではないでしょうか。
それゆえに、世の中には大量の時間管理術が溢れかえっています。
- いかに生産性を高めることが出来るか?
- いかに時間を有効活用することが出来るか?
仕事の場で、学習の場で、あるいはSNS上で、耳が痛くなるほどこのような話を見聞きしてきた人もいるでしょう。
なんとか時間を有効活用しようと、「ながら運動」「ながら学習」のようなものに取り組んでみたり。
あるいはなんとか時間を生み出そうと、朝活を始めてみたり、「睡眠なんて時間の無駄だ!」と寝る間を惜しんで勉強してみたり。
もはや「生産性を高める」「時間を有効活用する」というのが絶対の正義であり、常識であるように思います。
しかし、これだけ多くの人が時間の問題に取り組んでいるにもかかわらず、時間に関する悩みがなくならないのも事実。
一体なぜなのでしょうか?
そんな疑問へのヒントとなるのが、鈴木裕さんの著書『YOUR TIME』です。
表面上のテクニックだけでなく、「そもそも時間とは?」という根本の問題を掘り下げた上で、本当に使える時間術を知ることが出来ます。
その内容の一部を、当記事でまとめていきたいと思います。
本の概要
本書は4063ものデータを基づき、科学的な知見から本当に使える時間術をまとめた本です。
時間術に関する本は他にも数えきれないほどありますが、「そもそも時間とは?」という点を深堀りした上で、本当に使える時間術を紹介している点が、類書と大きく異なる本書の特徴です。
本書は以下の章で構成されています。
序章:【時間術の罠に気づくー時間の使い方について誰もが間違う3つの真実】
1章:【時間の正体を知るーあなたが時間をうまく使えない驚くべき理由】
2章:【未来をやり直すー「予期」の精度を高める13の方法】
3章:【過去を書きかえるー「想起」を正しく使いこなす11の方法】
4章:【効率化から解き放たれるー時間を“うまく使いたい“気持ちが時間不足を起こす理由】
終章:【退屈を追い求めるーあなたから時間の余裕を奪う最大の難敵】
終わりに:【脳はしょっちゅうエラーを起こす】
誰もが抱える「時間の問題」を解決するために使えるテクニックこそがこの本の魅力だとは思うのですが、個人的に「時間とは一体何だろうか?」「時間の効率化という考え方ってそもそも正しいの?」みたいな話が面白かったので、その辺りを中心にまとめていきたいと思います。
具体的なテクニックを知りたい方はぜひ本書をご覧ください!
著者はサイエンスライターの鈴木裕さん。
累計100万本以上の論文を読破した科学的知見から、『無(最高の状態)』『進化論マーケティング』『最高の体調』など、他にもあらゆる分野の著書を手掛けています。
月間250万PV超のブログ「パレオな男」の運営者でもありますね。
そんな著者が科学的知見を駆使して、多くの人が抱える「時間の問題」を解決するためのヒントを授けてくれます。
一体どんな内容なのか、その一部をまとめていきたいと思います。
なお、以下のまとめは自分なりの言葉に置き換えたり構成を少し変えたりしながらまとめていますのでその点ご了承ください。
著者の正確な表現が知りたい方は本書をご覧いただければと思います。
ポイント①:現在の時間管理術の問題点
- 私たちは誰もが「タイムマネジメントは重要である」という常識を持っており、多くの時間管理術が生み出されて来た。それにもかかわらず、実際に時間に関する悩みが解決した人は多くない。
- 現代に存在するタイムマネジメント術には、明確な実証結果のないものも多く存在している。それどころか時間術が問題の解決にならないことを裏付けるデータも存在し、例えばマッキンゼーとオックスフォード大学が5400を超えるITプロジェクトを調べた研究では、参加者の大半が時間術を使っていたにもかかわらず、大抵は当初見込みよりも3.5倍もの時間がかかってしまっていたという。
- 時間術に対して、多くの人が誤解している3つの真実が存在する。
真実①:時間術を駆使しても仕事のパフォーマンスはさほど上がらない
- ToDoリストや作業時間の計画などの時間管理術は、仕事のパフォーマンス改善には役立たないという報告が多い。例えばコンコルディア大学などが2021年に行った約5万3000人分のデータを精査したメタ分析では、時間術と仕事のパフォーマンスには「r=0.25」の相関しかないとの結論が出された(※r=0.25→かなり相関性が薄いと言えるレベル)。
真実②:時間の効率を気にするほど作業の効率は下がってしまう
- 効率の重視を重視することは良いことと考えられているが、実際には仕事の成果が下がってしまうケースも多く見られる。その理由は大きく2つある。
①時間効率の追求が判断力を下げるから
- 数多くのタスクを効率よくこなすうちに脳の処理能力が限界に達し、判断力が低下する。IQが13ポイント下がるという研究もあり、これは一晩眠らずに過ごした場合の水準に相当する低下である。
②時間効率を上げるほど創造性が低下するから
- ハーバード・ビジネススクール教授のテレサ・アマビールの研究によると、効率化により集中力は増す一方で創造性を失う可能性が示されている(人の脳は集中と拡散が同時に機能するようにはできていないから)。現代では仕事の7割は創造的な発想が求められているとも言われているので、現代の仕事環境に「時間の効率化」という考えは適していないと考えられる。
真実③:「時間をマネジメントする」という発想の根本に無理がある
- そもそも、大半の時間術は時間の使い方とは関係がない。時間術によりパフォーマンスが改善したとの報告も、時間とは関係のないパラメータが改善したことが仕事のパフォーマンス向上が見られたパターンがほとんどである。
ポイント②:そもそも時間とは何だろうか?
- 「時の流れを感じる」「時間が過ぎるのが早い/遅い」などとは言うが、私たちには視覚などと違い、時間の流れを体感するための器官が存在しない。にもかかわらず、私たちはなぜ時間の流れを体感できるのだろうか?その結論を一言で言うと、以下の通りとなる。
人間は「時間の流れ」など実感できておらず、世界の変化率を「時間」と呼んでいる
- 近年の科学では、この考えを裏付けるデータが増えてきている。要するに、私たちが体感する時間は、脳内にしか存在しない架空の概念である。
- 認知科学の世界では脳の「確率を見積もる機能」の存在を重視している。これは元々は神経科学者のホレス・バーロウら提案した考えで、現在に至るまで行動科学や認知科学などの分野で妥当性が示されてきた考え方である。
- 確率とは脳が無意識下で行う計算のこと。目の前の出来事に対して、脳は「目の前の現象が過去の経験に当てはまる確率(過去→現在の変化率)を見積もり」「未来に起こること(現在→未来の変化率)を予測する」。
- 例えば、目の前に積まれた瓦礫の山を見た時、私たちは以下のような計算をする。
- 過去自分が経験やニュースなどを元に、「瓦礫の山は本は建造物だったのだろう」などと推定する(過去の「想起」)。
- 再び、「瓦礫の山が自然に組み上がることはないので、誰かが片付けないとずっとこのままだろう」などと予測する(未来の「予期」)。
このように、脳は「過去又は未来の出来事として確率が高い世界」を高速で計算して生み出し続けている。このプロセスを私たちは「時間が流れる感覚」として体験しているのであり、これこそが私たちが日常的に体験する「時間」の正体である。
このように、「時間」とは「過去の想起」と「未来の予期」の計算の連続である。これらの計算がズレることで、時間に関する私たちの悩みが発生している。つまり、正しい時間術とは私たちの「予期」と「想起」を調整するものである。
ポイント③:時間を“うまく使う“だけでは、本当の悩みは解決されない
「時間の効率や生産性の過度な追求」が不幸を招く
- 私たちの多くが「時間がない」ことに悩んでいる。全米科学財団の調査によると、「いつも急かされているように感じる」人の割合は右肩上がりに増えており、現代ではおよそ7割が「時間に追われている」感覚を持っている。しかし実際のところ、私たちの自由時間は昔から減りも増えもしていない。
- なぜ多くの人が「時間がない」ことに悩まされているのだろうか?多くの社会心理学者は、「“時間の効率や生産性の過度な追求”が次のような問題を引き起こしているから」だと指摘する。
①「人生はやるかやらないかのどらちかだ!」という考えでメンタルが病む
- 「とにかくスピーディーに行動を起こし、効率と生産性を求める」姿勢や考えが、メンタルの悪化につながる可能性が指摘されている。これは、効率化のプレッシャーのよりメンタルが病むことが理由だと考えられる。
②効率化の意識が生産性を下げる
- ある調査で、効率や締め切りを強調する企業ほど、実際には従業員の生産性が低いことが分かっている。これもプレッシャーによりストレスが慢性化することで心身のバランスが崩れ、生産性の低下につながるからだと考えられる。
③生産性を上げるほどむしろ忙しくなる
- いかに生産性を上げようとも、その余白分だけ仕事が増えるので、結局忙しさは解消しない(例えばメールを早く返信するほど相手の返信も早くなるし、効率化により空き時間が生まれればそこに新たな仕事が詰め込まれる)。
「時間をうまく使う」という考えは本当に正しいのだろうか?
- 私たちが「時間をうまく使う」ということにこだわり始めたのは18世紀の産業革命の頃から。その後、経営学者のフレデリック・テイラーのアイデアを元にしたヘンリー・フォードのアイデアにより、「時間管理」の概念が世に広まって行った。
- この話からわかるように、時間の管理を使った効率化はごく近代の発明でしかない。事実、産業革命以前は時間管理もなく、時間に追われる感覚を抱く人も多くなかった。ほんの数百年の歴史しかなく、そもそもは工場を効率的に回すためだけに生まれたのが、「時間をうまく使う」ための時間管理術である。
- 世の中の時間術は全て「いかに時間をうまく使うか?」という視点からデザインされている。しかし、「時間をうまく使う」という考え方には根本的な問題があり、その欲望そのものが、私たちの幸福度と生産性を下げてしまう。
- 近代の効率重視の文化においては、休息やレクリエーションでさえ、生産性アップに役立つものしか存在を認められない傾向がある。例えば子供のチームスポーツも、仲間と楽しむアクティビティではなく、勝ち負けにこだわる行為になってしまっている。
- 多くの専門家が、このような効率や生産性にこだわる現代人のメンタリティを問題視している。バックネル大学の言語学者であるハロルド・シュヴァイツァーは、次のように指摘する。
テクノロジーによる生産性の向上は、わたしたちを時間の主人にしてくれるはずだった。しかし、皮肉なことにテクノロジーは私たちを時間の奴隷にしてしまった。
出典:『YOUR TIME』
これらの問題を解決するテクニックが知りたい方はぜひ本書をご覧ください!
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