「リスクと恐怖」にどう向き合うかーリスクポートフォリオのバランスが成否を決める

価値観/キャリア
  • 「成功したいなら思い切ってリスクを取れ!」
  • 「失敗を恐れるな!思い切ってチャレンジしろ!」

キャリアの別れ目など人生の重要な局面で、上のようなアドバイスを耳にした人も多いのではないでしょうか。

私たちの文化では、大胆にリスクを取って行動するという事が、至る所で美談として語られています。

一念発起して会社を辞め、大きな成功を収めた起業家の話。

思い切った投資して、大金を手にした投資家の話。

死をも恐れず、強敵に立ち向かっていく漫画の主人公。

こうしたストーリーは非常に分かりやすく、感動的であり、私たちの心に突き刺さっていきます。

その一方で、こういったストーリーは時に私たちを挑戦から遠ざけてしまう事があります。

大胆に行動する勇者を見て、「自分には到底真似出来そうもない」と考えてしまうからです。

以前別の記事でも書いたように、人には「損失を回避したい」という強い感情があります

大きなリスクを犯して行動する事は、誰にとっても怖いもの。

失う物の代償を考えると、一歩踏み出す勇気も萎んでしまうもの。

そうは言っても、現状に留まっていては進歩は見込めない。

リスクを恐れず前に進んでいけるのは、恐れを知らない特別な存在だけなのでしょうか?

それとも、私たちのように恐怖を感じながらでも、リスクと向き合い前に進んでいく事は出来るのでしょうか?

今回のテーマは「リスクの取り方」です。

参考にしたのは以下の本↓

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起業の成功率を高めるには、今の仕事を辞めるべきか?続けるべきか?

ここで見ていくのは、2つのタイプの起業家です。

仕事を辞めて起業するのと仕事を続けながら起業するのとでは、どちらの方が成功確率が高いか?という話です。

アメリカの2名の経営学管理研究者によって、ある研究が行われました。

研究では、1997年から2008年の間、20代から50代までの5000人のアメリカの起業家を対象に、「本業を辞めて起業した場合と本業を続けたまま起業した場合、どちらの方が成功確率が高いか?」という事を調べたものです。

前者は大きなリスクを取って一念発起した人たち、後者は安定を確保しつつチャレンジして行った人たちですね。

安定を確保した状態で起業するとなると「そんな中途半端な覚悟で成功出来る訳ないだろ!」なんて怒られてしまいそうですが。。(笑)実際のところはどうなのでしょうか?

結果は、「本業を続けた起業家の方が、辞めた起業家よりも倒産する確率が33%低かった」というものでした。

バランスの取れたリスクポートフォリオ

マルコム・グラッドウェルの「1万時間の法則」に代表されるように、ある特定の分野で成功を収めたいのであれば、その一点にリソースを集中して熱意を持って取り組まねばならない。

そんな考え方の方が一般的かと思います。

もし、安定を保ったまま出来る範囲でチャレンジしようとなれば、恐らくこう問われるでしょう。

「あなたには覚悟がないのか?」

確かに、本業を辞めた起業家に比べて、本業を続けた起業家の方が覚悟が足りていないように思います。

覚悟の話を抜きにしても、本業を辞めて起業した方が多くの時間と労力を注ぐことが出来るので、有利なように思います。

では、一体なぜ本業を続けた起業家の方が失敗する確率が低かったのでしょうか?

その理由を、組織心理学のアダム・グラントは、著書『ORIGINALS』の中で、以下のように語っています。

つまり、ある分野において安心感があると、別の分野でオリジナリティを発揮する理由が生まれるというメリットを見逃しているのだ。

出典:『ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」ができる時代』

しっかりした安定を確保しているという「安心感」があるので、別の分野では思い切った冒険をすることができるということですね。

これがバランスの取れたリスクポートフォリオの考え方です。

「ある分野で危険な行動を取ろうとするなら、別の分野で慎重に行動することで全体的なリスクレベルを弱め、バランスを取ろうとする」というものです。

どこでリスクを取り、どこで安定を取るか

バランスの取れたリスクポートフォリオのポイントは、決して「あらゆる分野で中くらいのリスクをとる」のではなく、「どこかで大きなリスクをとり、別の分野では確かな安定を築く」ということにあります。

重要なのは「安心感を感じられるものがあるかどうか」という点。

不安定だが夢のある職業に就くのであれば、合間に副業をすることで手に職をつけておく。

未経験の領域にチャレンジするのであれば、なるべく給料の高い会社を選ぶ。

あるいは、家族など自分にとって大切な人がいることで仕事では思い切ったチャレンジが出来るというのも同様かと思います。

思い切ったチャレンジをするという一本足打法では、上手く行っている時は良いものの、不安定になってくると何かを失う恐怖から保守的な行動ばかりを取るようになっていくでしょう。

以前別の記事で書いたように、「何かを失う」恐怖は、誰しもが持つ非常に強い感情です。

「いざとなったら自分には〇〇がある」という安心感を持ちながら、冒険をすること。

これが、リスクとリスクを取ることの恐怖と上手く付き合いながらチャレンジをする良い方法なのではないでしょうか。

世の中を変えた偉人たちも恐怖と戦ってきた

リスクを冒す時に感じる恐怖は、決して悪いものではありません。

何かにチャレンジし、成功出来るのは、恐れを知らない特別な存在だけではありません。

世の中を変えてきた偉人たちも、皆恐怖と戦いながら行動を起こしました。

革命活動参加の任命を「あらゆる手を尽くして何としてでもこの任務を避けようとした」というジョージ・ワシントン。

「地球が太陽の周りを回っている」という発見を、笑いものにされる恐れから22年間も口外出来ずにいたニコラス・コペルニクス。

公民権運動を主導することに不安を抱き、「私には夢がある」で知られる名スピーチを、「もっと考える時間があれば、その指名を断っていた可能性があった」というキング牧師。

彼らは恐れ知らずなのではなく、恐怖と向き合い、それでも行動していったのです。

リスクをどこかで取ろうとするなら、別のどこかで安定を築き、リスクポートフォリオのバランスを整えることで安心感を生み出すこと。

それが出来れば、特別な存在でなくとも、リスクを取ってチャレンジし、成功確率を上げていく事も出来ます。

最後に前述のアダム・グラントの、これから一歩を踏み出す人たちに向けたメッセージをご紹介します。

くり返しになるが、オリジナルなことを実現して成功している人たちの中身は、私たちとさほど変わるものではない。
彼らも、みなと同じような恐怖や不安を感じている。
しかし、何が違うかといえば、「それでも行動を起こす」ということだ。
「失敗することよりも、やってみないことの方が後悔する」
彼らはそのことを、身をもってわかっている人たちなのである。

出典:『ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」ができる時代』

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