【要約】超専門化社会でこそ「知識の幅」が重要だ!ー『RANGE 知識の「幅」が最強の武器になる』

価値観/キャリア

デイビッド・エプスタインさんの著書『RANGE』を読みました。

ビル・ゲイツも絶賛するなど幅広い人気を誇る本で、専門特化が推奨され、分業化が進む世の中に一石を投じ、「回り道をしながら幅広く学んでいくこと」の重要性が書かれています。

早速まとめて行きたいと思います。

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本の概要

この本の要点を簡単にまとめると以下のような感じです。

  • 幅広い知識や経験が、クリエイティビティを発揮する鍵になる。
  • 「早く効率的に」学ぶより、「ゆっくり非効率に」学ぶ方が効果的である。
  • 自分の色々な可能性を試すことで、自分に最適な仕事を見つけることが出来る。

科学者や芸術家にも「遅咲きの成功者」がおり、そういった人たちは自分の専門領域とは異なる幅広い分野への興味や経験を持っています。

著者はデービッド・エプスタインさん。

アメリカの科学ジャーナリストで、かつては権威のある米国誌「スポーツ・イラストレイテッド」でシニアライターを勤めていました。

TEDに登壇した経験も持ち、例えば以下の「アスリート達は本当により速く、強くなっているのだろうか?」などが有名です。

本書のポイントを掻い摘んでまとめていきます。

問題提起

専門特化は本当に一流への近道になるのだろうか?

  • 現代では世界が複雑化し競争が激しくなる中で、誰もが早期に専門特化し、確かな専門スキルを身につけるべきだと考えられている。しかし多くの研究で、テクノロジーや芸術などのあらゆる分野において、多分野で経験を積んだ人の方が、一つに専門特化したスペシャリストよりもクリエイティブで影響力の大きいものを生み出すことが出来ていたことが示唆されている。
  • 例えばスポーツの分野では、タイガー・ウッズのように幼いことから一つのスポーツで英才教育を受け、類稀なる才能を発揮し、世界の頂点にまで上り詰めたケースもある。その一方で、ロジャー・フェデラーのように幼い頃に色々なスポーツを経験し、「ゆっくり専門を決めること」で、素晴らしい功績を挙げたケースもある。
  • フェデラーは幼い頃から幅広いスポーツを経験し、英才教育を受けることもなかった。テニスに絞った時には同世代の選手たちは専任のトレーナーと長年のトレーニングを積むなど、フェデラーの遥か先を行っていた。
  • また、子供の教育においても、練習量や練習時間は、将来優秀な子供を育てるためのバロメーターになるとは限らない。例えば、8歳から18歳までの様々な音楽レベルの子供たちを調べたところ、以下のようなことが分かった。
  • 優秀と評された学生はそうでない学生と比べ、音楽に関心の低い家庭や、家に楽器のない家庭で育った子供も多かった。むしろ幼い頃から長時間練習を積んでいた子供は、その全員が「平均レベル」に止まっていた。
  • 差を生んでいたのは取り組んだ楽器の多様性である。「最優秀レベル」と認められた子供たちは、3種類の楽器に均一に取り組んでいた一方で、平均レベル以下の子供達の多くは一つの楽器に集中的に取り組んでいた。

一つの道に固執するリスク

  • 私たちは、何か一つのことを粘り強くやり続ける人を賞賛する。その代表例の一つに、やり抜く力の重要性を説いたアンジェラ・ダックワースによる著書『Grit(グリット)』がある。
  • グリットは「情熱」と「忍耐力」を組み合わせた能力で、ダックワース氏はマッカーサー賞を受賞するなど、「グリット」は一躍有名になった。しかし、あまりの熱狂ぶりに、ダックワース氏自身が懸念を示すほど、「グリット」は拡大解釈され、一人歩きしてしまっている。
  • 自分の適性を見つけるまでの道程で、時に粘り強さは障害になる。サンクコスト効果に取り憑かれ、今までやってきたことをやめられずにいる人もいる。
  • 多くの人は、「早めに明確な目標を設定し、かつ早く始めた方が、安定を確保できるので合理的」だと考える。しかし、自分に合うかがわかる前に、一つのことに深く関わるのはリスクが高い
  • 人の仕事や生き方に対する好みは常に変化する。また、人の性格は時間や経験、状況により大きく変化し、最も重大な性格の変化は、18歳から20代後半にかけて起こる。それにもかかわらず、若くて経験不足で、置かれた状況が限定的である中で確固たる長期目標を定めるのは、まだ存在しない自分の適性を予測することに等しい。当然、その予測が当たる確率は低い。

スペシャリストが嵌る罠

  • 心理学者のロビン・ホガースは、同じようなパターンが繰り返され、非常に正確なフィードバックを得られる環境を「親切な世界」と名付け、決まったルールがなく、正確なフィードバックのない環境を「意地悪な世界」と名付けた。
  • 政治学者のフィリップ・テトロックは、積み上げた経験により正しい判断をするためには、以下の2つの条件を満たている必要があると言う。
  1. 自分自身が、その分野で十分な経験を積んでいる
  2. 結果がある程度予測可能である(医者が患者に判断を下す時や、消防士が燃え盛る建物に入るか決める時等)
  • 予測可能な「親切な世界」では、積み上げた経験が役立つ。しかし、予測が困難な「意地悪な世界」では経験が役に立つとは限らない。例えば、ある研究では、経験豊富な会計士は新人より新しい税法などを適用することができないことや、ブリッジのエキスパートほど新しく導入されたルールへの適応に苦労することが示唆されている。
  • また、ノーベル賞を受賞した行動経済学者のダニエル・カーネマンが士官候補生の判断力をテストしたところ、士官候補生は経験とともに自分の判断に自信を持てるようになったが、精度は当てずっぽうに判断した場合と変わらなかったという。
  • 上記のようなことが起こるのは、経験のある専門家ほど、「アインシュテルング効果」の罠に嵌ってしまうから。つまり、専門知識や過去の成功例ばかりに頼ってしまうことで、視野が狭まり判断を誤りやすくなることを示唆している。
  • 厄介なことに、私たちが生きる変化の激しい現代は不確実性の高い「意地悪な世界」である。「自分がよく知っている知識」は、もはや頼りになる絶対的な公式ではない

超専門特化社会で輝くゼネラリストの武器

ポイント①:「アナロジー」幅広い知識を未知の領域に応用する

  • 予測困難な「意地悪な世界」では、「アナロジー」を用いることで、全く異なる分野や未経験の問題を解くことができる。
  • 「アナロジー」は類推のことで、複数の全く異なる分野の深いところにある構造を評価し、概念的な関連性を見つけ、それらを使って直面する問題に適用していく能力である。例えばある実験では、当たり外れの予測が非常に難しい映画業界でも、「アナロジー」を用いることで19本中15本で数学モデルよりも正確に予測することが出来たと報告された。
  • ネットフリックスも「アナロジー」を活用することでアルゴリズムを改善し、顧客の好みを推測することに役立てている。その顧客が「何を好きか」ではなく、「誰に似ているか」を明らかにすることによって、効果的な予測をしているのである。
  • また、アルフ・ビンガムが設立したインセンティブ社は、専門家が行き詰まった問題を公開し、外部に解決策を募るビジネスをしている。NASAが30年解決できなかった問題が、外部の専門家でない人によって解決がされるケースなどがある。
  • インセンティブ社がこれまで掲載された問題のうち、外部の人によって3分の1が解決されている。中にはその問題に関する経験が全くない人もおり、専門家が行き詰まった問題ばかりだと考えると、その解決率は驚くほどに高い
  • ブレイクスルーが起きる時に多く見られるのは、あることを始めたしばらくした後に、また別の道に行き、初心者のようになる時に起こる。ある分野では一般的なアイデアも、別の分野に持っていけば創造的なものになるからだ。例えば、海外で仕事をした研究者は、その経験がない研究者に比べてよりインパクトのある研究をする傾向があることが分かっている。
  • このように、あるスキルを別の問題に応用したり、一般的なものを一般的でない形で組み合わせることが、未知の問題を解く鍵となる

ポイント②:「マッチクオリティー」自分の色々な可能性を試してみる

  • 経済学用語で、その人の能力や性質と仕事がどれだけあっているかを表す言葉「マッチクオリティー」という。専門特化を遅らせることで専門スキルが身につくのは遅くなるが、色々な学問や分野を試すことで、自分の才能や性質に合ったものかどうかを、よりはっきりと見極めることができるようになる
  • 自分のマッチクオリティーが何であるかは、実際にやってみるまではわからない。だからこそ、「自分は何になりたいのか」という問いに答えを出そうとするよりも、自分自身の研究者となって実験をするかのように、自分の色々な可能性を試していくこと。
  • 真っ直ぐ歩いていた道から外れること心理的な不安を伴い、「自由に活動する」ことは一見非効率であるように感じる。しかし、幅広さからくる視点から、その分野の人が疑問を持たないようなことに疑問を投げかけられるという利点がある。
  • 経済学者のオファー・マラマッドが行ったイギリス数千人の大卒者に対してある調査によると、スコットランドの大卒者はイングランドとウェールズの大卒者と比べ、専攻を決めるのが遅いため専門スキルが身につくのが遅く最初は年収が低いが、すぐに追いつくことが分かっている。
  • ファン・ゴッホは、若い内はあらゆる職を渡り歩き、33歳の頃に参加したデッサンコンテストでは審査員が10歳の子供が通う初心者クラスを勧めた程のものでしかなかった。しかし、その後亡くなるまでの4年間で1億ドルの絵を4枚も生み出している。
  • J・K・ローリングは、20代の頃は仕事でも私生活でも失敗ばかりで自殺を考えたこともあったという。しかし、その後彼女が書いた「ハリー・ポッター」は、世界各国で4億部以上出版され、史上もっとも売れたシリーズ作品となっている。
  • このように、ある分野から全く別の分野に移っても、その結果最初にうまく行かなくても、それまでの経験が全く無駄になることはないし、後れをとったと思う必要もない
  • 寄り道しながら実験をする方が、特に不確実性の高い現代では力の源になる。自分を誰かと比べるなら、他人ではなく、過去の自分自身と比べよう

以下の記事で、『RANGE』を読んでの個人的な感想や考察などをまとめています。

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