学習の専門家から学ぶ「正しい学びの6ステップ」とは?【Learn Better】

学習/習慣
  • 勉強したいが、どうやったらいいかわからない
  • いくら学習してもなかなか成果が出ない

こういった勉強へのお悩みのある方は多いんじゃないかと思います。
特に独学で勉強する人にとっては避けられない悩みなんじゃないでしょうか。
「効果的な勉強法」を知る上で個人的におすすめ出来るのは『Learn Better』という本です。
著者は米国先端政策研究所の上級研究員で、日々学びの研究と発信を行っているアーリック・ボーザーさん。

そんな学習の専門家が、過去の研究から効果のある勉強法をまとめ、それを誰でも実践しやすいよう6つのステップにまとめてくれています。
この本をベースに学習を組み立てることで、「覚えられない」「理解できない」みないなことが極力減ってより効果的な学習が出来るじゃないかと思っています。
なので、『Learn Better』に沿って「効果的な学習の6ステップ」という形でまとめていこうと思います。

なお、基本的な枠組みは『Learn Better』に従っていますが、内容については僕なりの解釈やおすすめ勉強法を加えている形なので、本書の正確な内容を知りたい方は是非本書を読んでみてください。

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そもそも学習とは?

効果的な学習法を知る上で、まず初めに押さえておきたいのは「そもそも学習とは何か?」というところ。
「学習」という言葉は日常的に何気なく使われていますが、改めて何を指す言葉なのか、ここで確認したいと思います。
まあ大体分かっているとは思いますが、「効果的な学習」を知る上で前提としてしっかりインストールしておきたいところです。
本書『Learn Better』では、「学習」を以下のように定義しています。

学習とは、理解のプロセス、メソッド、体系を指している。

(中略)
結果を出すことだけに力を入れるより、何の当てもなく試行錯誤するより、学習プロセスに力を注いだ方が成果が高くなる。

出典:『Learn Better』

つまり、学習とはプロセスのことで、プロセス次第で成果が変わるんだからそこに力を入れよう!ってことですね。
勉強といえば結果にばかり目が向いたり、とにかく継続することばかりに焦点が当たったりすることも多いじゃないかと思います。
もちろんそれも重要だと思いますが、それだけじゃなくて学習のプロセスそのものにも目を向けて改善していこう!というのが、まずは抑えておきたい基本的な考え方です。

実際、学習方法が成果に違いを生むことを示すデータはいくつかあります。

例えばケント州立大学が200超の学習に関する研究を取りまとめ、「本当に効果のある学習方法」を調べた結果、「重要な部分にハイライトをする」「語呂合わせで覚える(泣くよウグイス平安京的な)」「テキストを何度も読み返す」といったメジャーな学習方法は「学習効率が非常に悪い!」という結論が出たそうです。(R

こんな感じでメジャーな学習方法でも効率の悪いものは多いので、偏見などで判断するんじゃなくてちゃんと効果がある学習方法を見極めて力を入れていこう!というところをまずは抑えておきましょう。

学習における問題点

「学習」というのが勉強のプロセスのことだということが分かったところで、続いて「学習」にまつわる問題点を見ていきましょう。
多くの方が、学校などで国語や数学を学んだ一方で、「学習方法自体を学んだことはほとんどない」という状態なんじゃないかと思います。
上にも書いたように、一般に知られる学習方法であっても研究の裏付けがないものも多くあります。
「勉強法」を学んだことがなく、しかも一般的に知られる方法はデータの裏付けのものも多いので、私たちが学習に迷ってしまうのも当然ですよね。
じゃあどうしたら良いの?って話ですが、幸いにも、勉強法については近年科学による知見が得られています。
しかもその多くはそれほど手間がかからずに習得できるので、それを使わない手はないでしょう。

学習の6ステップ

ということで前置きが長くなりましたが、「l効果的な学習の6ステップ」を早速みていきましょう!
本書では知識取得のための体系的なアプローチ(手順)を以下の6ステップにまとめています。

  1. 価値を見出す:学ぶ価値があると思えるよう意味づけをする
  2. 目標を設定する:学びたいものを見極め、目標を設定する
  3. 能力を伸ばす:スキルやパフォーマンスを磨くことに特化した方法で学ぶ
  4. 発展させる:知識を応用し、より意味のある理解を形成する
  5. 関係づける:知識や事実が、他とどう関連するかを知る
  6. 再考する:学んだことを考え直す

それぞれ詳細に見ていきましょう!

ステップ①:価値を見出す

まずは最初のステップで「自分にとっての意味を見出す」こと。
学びたいことに対して「これは自分にとって学ぶ意味がある!」と思えないと、モチベーションも上がらないし、集中も出来ないですよね。
脳科学の研究にも携わったことがある安宅和人さんは著書「イシューからはじめよ」でこう言っています。

結論から言えば、答えを出すべきイシューに、比較によって意味合いが生まれるのは、僕たちの脳の情報処理の特徴のためだ。

(中略)

脳神経系の基本単位である単一のニューロンでは、ある一定レベルの入力がないと情報を長距離に渡って伝達する活動電位というものが発生しない。

これを「全か無の法則」というが、神経系は群であろうと脳のレベルになろうと、基本的に同じ性質を持っている。

その結果、匂いであろうが音であろうが、ある強さを超えると急に感じられるようになり、あるレベルを割り込む急に感じられなくなる。

出典:『イシューからはじめよ』

これだけだと何が何だかという感じだと思いますが、つまり、「脳が意味を感じられないものには脳が反応しない」みたいに捉えていただければいいんじゃないかと思います。

とはいえ、残念ながら学ぶ対象が何でもかんでも自分が興味を持てることばかりだとは限らないですよね。
自分が興味があることだけを勉強する事が出来れば良いかもしれませんが、現実的にはそういう訳にもいかないでしょう。
ここで重要なのは「意味を自分自身で発見する」ということ。
「自分が興味を持てることだけをやる!」ではなく「興味を持てるように自分から意味を見出す」ことが必要な訳ですね。
具体的には、ジョブ・クラフティングの要領で自分が興味を持てる点を探していくのが良いんじゃないかと思います。

本書でも、ジョブ・クラフティングにならって学習でも「意味を自分で見出す」ことをお勧めしています。

「ジョブ・クラフティング」と名づけられたこのアプローチの基本にあるのは「自分の関心ごとに合うように仕事を変えてしまおう」というメッセージだ。

(中略)

ここには大事な類似点がある。

学習のモチベーションにも往々としてこれと似たものが必要だ。

「ラーン[学習]・クラフティング」と呼ぼう。

出典:『Learn Better』

やり方は基本的にはジョブ・クラフティングと同じで良いかと思うので、こちらの記事をご参照ください。

ステップ②:目標を決める

学ぶ対象に意義を感じられるようになったら、次は目標を決めること。
「まずは目標設定から!」というと当たり前のように感じる人もいるかもしれませんが、意外と抜けがちな事もあるんじゃないかと思います。
目標を決めずにやるというのは、地図も持たずにとりあえず走り出すようなもの。
目標がなければ道筋も見えず、プロセスが定まらなくなってしまうので、まずはここで目標を決めていきましょう。
目標設定では、「①学ぶ対象を決める」「②計画を立てる」の2点に注意が必要です。

①学ぶ対象を決める

目標を決める段階でやりがちなのが「あれもこれも学びたい!」みたいになること。
人が短期間に覚えられる量には限界があるので、はやる気持ちを抑えて対象を絞り込むことが重要です。
また、前提知識は理解の土台になるので、その辺考慮して順番決めることも重要。
全く知らない分野を学ぶなら、いきなり難しい本を読むのではなく入門書から読むなど、ステップを踏んで上達するように計画していきましょう。

②計画を立てる

対象が決まったら次に具体的な計画を立てましょう。
この時に注意すべきポイントは、難易度の設定です。
多くの人は「既に知っていること」か「難しすぎること」を選びがち。
わかりきっていることを学んでも収穫は少ないですし、難しすぎても気持ち的にも萎えてしまいますよね。
ここでベストなのは「今の自分にとって少し難しいこと」を選ぶこと。
今の自分が知らないことだが、ある程度前提知識があるので全く太刀打ち出来ないものではない、みたいなレベル感が良いんじゃないでしょうか。
目安としては、自分が快適とか簡単だと感じるものより10%難しくするくらいがちょうど良いんじゃないかと思います。

計画を立てるための具体的な手法としては「戦略的リソース利用法」などを活用するのがおすすめです。

ステップ③:能力を伸ばす

目標が決まったら、実際に学んでいく段階に移ります。
この時に前提として抑えておきたいポイントとしては「学習は基本的に苦労するもの」だという点です。
多くの人はただ本や教科書を読んだり、動画を視聴するなど楽な方法に走りがちですが、こういった方法は効果が薄いことは実証済み(R)。
確かに頭を働かせると疲れるし、短期的には嫌な気持ちになるけどこうしたメリットを考えるとこっちの方がいい訳ですね。
ちなみに「苦労するもの」といっても、例えば「徹夜でぶっ通し勉強しよう!」みたいな話ではないのでご注意を。
あくまで「頭を働かせながら勉強しよう!」ということですね。

このステップでの流れとしては「学ぶ→理解する→復習する」という順番でやることがおすすめです。
理解した方がただの暗記よりも記憶しやすく応用を効かせやすいので、学んだことはしっかり理解し、その後復習するようにしましょう。
理解を深めるための方法としては、ノートやマインドマップを活用して学んだことを体系的に整理するか、ファインマンテクニックを使うのがおすすめ。
特にファインマンテクニックは自分が理解できていないことに対するフィードバックが明確なので、まずはノート等で整理する→ファインマンテクニックを使ってフィードバックを受ける、というのがいいかもしれません。
ノートを使う場合は以下の記事にあるように紙のノートの方がおすすめなので、こちらご参考までに。

学んだことを理解したら、今度はそれを覚えるための復習段階に入ります。
この時におすすめなのが検索練習。

詳細は以下の記事を見ていただければと思いますが、一言でいえば「学んだことを忘れた頃に思い出す」方法です。
テスト等により、学んだことを思い出せるか確認していきます。

特に最初のうちは間違いばかりで嫌な気持ちになることもあると思いますが、効果は実証済み(R)なので頑張りましょう!

ステップ④:発展させる

理解して記憶したら、次にやるべきことは知識を発展させること。
応用できるようにすること、即ち理解を深めたり、領域を広げることです。
領域を広げるっていうのは、要するに「学んだ知識を全体に統合していくこと」です。
例えば、日本史の勉強で「戊辰戦争」についてしっかり理解して覚えるところまでがステップ③で、そこから江戸時代全体での位置付けを把握することがステップ④での知識領域の拡大のイメージです。

例えば、

  • どんな背景があり、戦争が起こったのか?
  • その後にどのような影響を与えたのか?

などを考えていくことです。

こういったプロセスにより、戊辰戦争を学んだ後に、その部分が江戸時代全体にどう関係するかを学ぶ、といった形で理解を広げて行く訳ですね。

このステップで重要になってくるのが「問いかけ」と「説明」。
まず「問いかけ」ですが、学びながら説明を求める質問を自分に投げかけると習得の度合いが高まることが、さまざまな研究で証明されています。
例えば、以下の問いかけを学びながら自分に投げかけていきます。

  • 重要なのはどこか?
  • この概念をどう言い換えできるか?

また、「ソクラテス式問答法」などを使って学習中や学習後に自分への問いかけをするのもおすすめ。
例えばさっきの戊辰戦争の例なら、

  • 〇〇戦争や△△戦争とは何がどのように違うのか?あるいは似ているのか?(視点の質問)
  • 戊辰戦争は〇〇にどのような影響を与えたと考えられるか?もし戦争が起こらなかったら、それはどのように変わっていただろうか?(影響・結果の質問)

などを自分に問いかけることで、理解を深めていきます。

もう一つは学んだことを説明してみること。
説明しようとすることで、自分がわかっていない部分が明白になりますからね
説明をする際は「ファインマンテクニック」を使っても良いですが、他にも重要なポイントは以下があります。

  • 概念に自分なりの解釈を加える
  • 自分の言葉に置き換える
  • 重要なポイントを明確にする

個人的には特に置き換えが重要だと思っています。
よく意味がわかっていなものは、うまく置き換えができないからです。
これも自分が分かっているかどうかのフィードバックになるのと、逆に置き換えようと四苦八苦しながら理解を深めることができるからです。
難しい専門用語などは意味がわかっていないのにそのまま使ってしまうことが多いので注意。
メタファーなどを駆使して、より身近な概念に置き換えていきましょう!

ステップ⑤:関係づける

知識を取得し、発展させたら、次にやるのは関連付けです。
関連付けというのは、例えば「今勉強していることは、前に読んだあの本が言っている事に似ているな、、」みたいに、別の概念同士を紐づけることです。
関連付けが重要なのは、関連付けにより以下のような効果があるから。

  • 理解が深まる
  • 記憶しやすくなる
  • 応用しやすくなる

学習とは脳内で情報ネットワークを築くことと言っても過言ではなく、関連付けをそれを作るものと言えます。
認知科学者のリンゼイ・リッチランドは学習では丸暗記するのではなく、類似点や相違点を探すべき、と主張おります。

関連付けの段階で使えるのが、アナロジーという考え方です。
アナロジーの異なる概念同士を比較、つまり類似点と相違点に気づくこと。
特に馴染みがない新しい概念や考え方を理解するのに使える方法です。
まだまだピンと来ないかもですが、「知らないことを知っていることを通じて理解しよう!」みたいにイメージしていただければ良いんじゃないかと思います(「〇〇って△△に似てない?」みたいな)。

また、「学んだことを自分の身の回りの出来事に関連づけるように問いかけをするのも重要かなと思います。
結局のところ学んだことは実際に使えてなんぼなので、以下のように問いかけて実生活での活用方法を見出していきましょう。

  • この概念を何か自分の生活に適用することは出来ないだろうか?どのようにすれば、これを活用できるだろうか?

後は読書をしながら「この話、あの本のあの話と似ていないか?何が同じで何が違うんだろう?」みたいに考えながら読んだりしてます。
これについては、ソクラテス式問答法がここでも使えるんじゃないでしょうか。
こんな感じで今学んでいることを過去学んだことと関連づけるのもおすすめです。

ステップ⑥:再考する

ステップ⑤までやれば、学ぶ対象のスキルや知識について、かなり良い感じに理解が進むでしょう。
そんな中で、最後に必要になるのが「再考」です。
再考する事の重要性を説明したアダム・グラント先生の『THINK AGAIN』なんかが有名ですね。
というのも、知識は陳腐化するので、一度身につけた知識が一生そのまま使えるとも限らないからです。
再考することで、常にアップデートをかけていくことが必要になるわけです。
大変な時代なもんですね。

じゃあ具体的にどうするか?というところで、おすすめなのは「フィードバック」「内省」の2つです。
なんだかんだ手っ取り早いフィードバックですが、自分が学びたい分野について都合よくFBがもらえる環境とも限らないでしょう。
そんな時は、自分で内省してみるのもありでしょう。

その他にも『THINK AGAIN』に書かれていることは学習でも使えると思うので、こちらも併せて読んでみてくださいね。

最後に

だいぶ長くなりましたが、『Learn Better』から「」をまとめていきました。

以下の6ステップを参考に、学習を進めてみてください。

  1. 価値を見出す:学ぶ価値があると思えるよう意味づけをする
  2. 目標を設定する:学びたいものを見極め、目標を設定する
  3. 能力を伸ばす:スキルやパフォーマンスを磨くことに特化した方法で学ぶ
  4. 発展させる:知識を応用し、より意味のある理解を形成する
  5. 関係づける:知識や事実が、他とどう関連するかを知る
  6. 再考する:学んだことを考え直す

具体的な学習方法については当記事の中でも少し触れましたが、以下の記事でも色々とまとめていますのでこちらも併せて読んでみてください。

今日はこの辺りで。

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