この前から「科学的に認められている学習テクニックをまとめていこう!」ということでやっています。
世の中にはたくさんの勉強法で溢れているので、「結局何を信じればいいかわからない!」みたいなことになりがちだったり。
その中でも
- 科学的にもお墨付きな勉強方法ってないんだろうか?
ということで、色々とまとめて行っている次第です。
どうせ何かのテクニックを使って勉強するなら、ちゃんと効果があると実証されているものの方が、試してみる価値があるというもの。
前回の「戦略的リソース利用法」に続き、今回は「メモリーパレス(記憶の宮殿)」と呼ばれるテクニックをご紹介していきます。
メモリーパレスについては、以下の本が有名ですね。
上の本でも紹介されている通り、「元々普通の記憶力でしかったなかった」というジョシア・フォアさんを全米記憶力チャンピオンにまで押し上げたテクニックです。
一体どんなものなのでしょうか?早速まとめていきたいと思います。
メモリーパレスとは?
「メモリーパレス」は記憶術の1つで、古代ギリシャの記憶術である場所法に由来したもので、他にも記憶の宮殿などの呼び方がありますが同じものです。
一言で言えば「覚えたいものを現実にある“場所“に結びつけて思い出す方法」というもの。
これだけだと何がなんだかって感じだと思うので、詳しいやり方は後述しますね。
なんでも人の脳はテキストよりも場所のような“イメージ“の方が記憶しやすいという特徴を持っているそう。
「人の顔は思い出せるのに名前が思い出せない!」って現象はよくあると思いますが、これはまさにイメージの方が記憶しやすい典型例ですね。
上にも書いた通り全米記憶力チャンピオンが使ってた記憶術でもあり、数ある記憶術の中でもかなり定評のあるテクニックと言えるでしょう。
メモリーパレスのトレーニングを積むことで頭が良くなるかも!?
全米記憶力チャンピオンが使っていただけあって、その効果は科学の世界でもお墨付き。
記憶術として役立つだけでなく、「もしかしたらメモリーパレスを使うことで頭が良くなるかも!?」と思わせてくれるデータもあったりします。
例えば以下のようなものがあります。
- 単語テストを行ったところ、「メモリーパレス」を使うようトレーニングを受けたグループは平均56個の単語を思い出すことができた(トレーニングを受けていないグループは平均30個)(R)
- 1日30分のメモリーパレスのトレーニングを受けたグループは、「デフォルトモード・ネットワーク」が強化されていた(R)
ちなみにデフォルトモード・ネットワークというのは、集中していない時に活性化される脳のエリアで、創造力に関わっていると言われているものです。
単に記憶術として優秀なだけでなく、脳の構造に良い変化を与えるポテンシャルもあるということですね。
創造力は頭の良さの1つであり、それが鍛えられるというのはかなりいい感じなんじゃないでしょうか。
メモリーパレスのやり方
そんな感じで中々期待出来そうなテクニックですが、ここからは具体的なやり方を見ていきましょう。
大きなステップとしては以下のようになります。
- 覚えたい言葉を、その言葉から連想できるオブジェクト(人・物)に変換する
- 馴染みのある場所を思い浮かべる(自宅とか)
- ①でイメージしたオブジェクトを②に配置する(例えば自宅なら、玄関→通路→自分の部屋みたいな感じでそれぞれ配置する)
「英単語を3つ覚える」というのを例として、それぞれ細かく見ていきましょう。
ステップ①:覚えたい言葉を、その言葉から連想できるオブジェクト(人・物)に変換する
例えば英単語を覚えたい時、以下のようにその単語から連想できるものに変換をしていきます。
- stun(唖然とさせる)→スタンガンを持ってきた男が突如現れ唖然とする自分を想像
- anarchy(混乱)→穴の上を歩いている人を見て混乱する自分を想像
- camel(ラクダ)→キャラメルを食べてるラクダ
こんな感じで、英単語なら単語の発音から連想できるイメージ(例:「camel」→「キャラメル」)+その単語の意味(例:「camel」→「ラクダ」)を組み合わせてオブジェクトを頭の中で作っていくのがやりやすいかと思います(例:「camel」→「キャラメルを食べてるラクダ」)。
まだまだイメージがつかない!って方は、Youtubeで検索すると色々と説明動画が上がっているので、そちらも見てみてください(他力本願)。
この動画なんかコンパクトな割にまとまっててわかりやすかったんでおススメです。
※動画6分5秒くらいから、このポイント(覚えたいことをオブジェクトに変換する)が説明されています。
ステップ②:馴染みのある場所を思い浮かべる
次は自分にとって馴染みのある場所を思い浮かべます。
自宅が使われることが多いですが、自分が簡単にイメージ出来るような場所ならどこでも大丈夫です(例えばマサラタウンみたいな架空の場所でもOK)。
ちなみに僕の自宅は狭くて場所が限られてしまうので、家から最寄り駅までの道をよく使います。
ステップ③:ステップ①でイメージしたオブジェクトをステップ②に配置する
ステップ①で連想した「①スタンガンを持った人」「②穴の上を歩いている人」「③ラクダ」をそれぞれ②の馴染みのある場所に配置していきましょう。
②は例として、自宅の「①玄関」「②通路」「③自分の部屋」とします。
それぞれの場所にオブジェクトを配置して、「玄関→通路→自分の部屋」の順で自分の部屋に向かうシーンを想像しましょう。
以下のような感じです。
- stun(唖然とする):「玄関」を開けるといきなりスタンガンを持った人が現れて唖然とする!
- anarchy(混乱):次に「通路」を歩いていくと大きな穴が空いていた。しかもその上を人が歩いていて混乱する!
- camel(ラクダ):なんとか「自分の部屋」にたどり着くと、キャラメルを食べているラクダがいた!
なかなかの非日常ですが、覚えられればなんでもOKです。
といってもまだまだイメージが湧かない方もいると思うので、参考までに「記憶の宮殿」の説明動画をもう1つ挙げておきます。
上でもご紹介した『ごく平凡な記憶力しかない私が1年で全米記憶力チャンピオンになれた理由』のジョシュア・フォアさんのTEDの動画があるので、こちらもよかったら見てみてください。
「メモリーパレス」はどんな時に使えるのか?
以前「学習テクニックの王様」として「検索練習」をご紹介しました。
「何かを覚えたい!」時はこの「検索練習」と「メモリーパレス」を使い分けて行くというのがいいと思っています。
「メモリーパレス」はここまでご紹介してきた通り強力なテクニックではあるものの、その特性ゆえ「単純な暗記にしか向いていない!(複雑な概念を覚える場合などには不向き)」「いちいちオブジェクトを連想するのが手間」というところが難点。
なので、基本的には使い勝手のいい「検索練習」を使って行くのがおすすめです。
とはいえ検索練習は「構造化されていない情報」や「問題に対して答えの数が多い情報」を覚えたい場合には不向き。
例えば「アメリカの歴代大統領を答えよ」「円周率100桁を答えよ」みたいなものや、法律でよくある「〇〇十ヵ条を答えよ」みたいな問題も、検索練習でやるには厳しいところがあります。
「この画像の鳥はなんという名前か?」「関ヶ原の戦いはどんな背景で起こったか説明せよ」のように、問題に対して一つの答えを用意していくのが検索練習の基本なので。
こういう「問題に対して答えの数が多い」時は、「メモリーパレス」の出番ですね。
まとめ
そんな感じで、ド定番の記憶術「メモリーパレス」についてまとめていきました。
複雑な概念を覚えるには不向きなものの、科学の世界でもお墨付きな記憶術なので、「これだけは絶対に暗記しておきたい!」みたいなものがある時には是非「メモリーパレス」を使ってみてください。
僕も基本は「検索練習」を使っていくと思いますが、「メモリーパレス」も活用していきたいなと思います。
その他、以下の記事で色んな学習テクニックをまとめているのでこちらも見てみてください。
今日はこの辺りで。
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